あなたはインプラント治療を受ける際に、手術って怖いなぁ、どんな麻酔するのかなあ、全然痛くなくできるかなぁ?などいろんな想像をするかと思います。今回はインプラント治療をする際における麻酔についてお話をしたいと思います。
麻酔について
多くの方が麻酔注射を歯科医院などで打ったことがあるのではないでしょうか。
麻酔注射は歯茎のあたりなどに細い針で注射を打つものです。その注射を打つことによってしびれてきて治療をしても痛くないと言う状況になるわけです。また中には最近では美容外科などがとても世の中では流行っていますので、笑気麻酔と言うものを聞いたことがあるのではないでしょうか。笑気麻酔と言うものは随分と昔から歯科医院では一般的に使われていたものです、例えば子供の治療の際にどうしても怖い、暴れてしまうって言うような場合に子供を落ち着かせるために笑気麻酔を使ったりします。あるいは大人でも、どうしても治療が怖いからと言うことで軽度の鎮静作用があり、怖さを取り除くために笑気麻酔をすることがあります。またイギリスなど海外では産婦人科で出産の際に痛みを和らげるために笑気麻酔を使っていると言うような国もあります。
ほかにも、静脈内鎮静法と言う麻酔方法があり、これは手に点滴をしてほとんど気を失うような状態で本人はほとんど何も覚えていない、しかし全身麻酔のように全く麻酔がかかって何も身動きも取れないと言う状況でもないものもあります。我々術者が患者様本人に話しかけると一応簡単な返事はしてきますですので、意識はあるのです。例えば痛くないですか?などと聞いたり、お口開けてください、などと言うと患者さんは、それに対して頷いたり返事をしたりしてゆっくりとその動作をするのです。この静脈内鎮静法が終わった後にどのようなことを受け答えをしていて、とか怖かったとかと言う、その一時的な時間の記憶ははっきりしていません。そういう意味ではあまり何も覚えていないと言うことです。
さらに全身麻酔と言う言葉を聞いたことあると思うのですがそのような本格的な麻酔と言う方法も一応考えられます。ですが歯科医院で全身麻酔をすると言うのはあまり一般的では無いですし、ほとんどそのようなことが行われる事はありません。
インプラント治療で用いられる麻酔
ではもう少し細かくインプラント治療に実際に行う際の、麻酔のレベルを軽度から高度なものまで細かく見ていきたいと思います。
1.麻酔注射
まずこれはそのインプラントをする場所の周りに局所麻酔注射をします。この局所麻酔注射は必ずするものです。仮に本人が全身麻酔をしていたとして全く痛くないと言う状態だったとしてもこの局所麻酔はします。と言うのはもしこの局所麻酔をしていないと患者さん本人は痛いと飛び上がるような事は無いのですが、脳や体は実際には痛みを感じるので、その痛みのダメージが後々残ってしまうので必ずするものなのです。そしてこの麻酔注射は皆さん多くの方が普通の歯科診療で実際に受けたことがあるものです。ちょっと、ちくっとするあれですね。そしてこのちくっとさえも痛くなくするための工夫が表面麻酔です。表面麻酔とはこれから麻酔注射をして針を刺すところを一旦表面麻酔用の塗り薬で消毒をします。この塗り薬で消毒をすることによって人によってはかなり痛みを感じないで針を刺すことができるようになります。
ただ針自体の痛みはなくても、実際には麻酔薬が体の中に入っていきますので、その時に本人は圧力を感じたりして、びくっとすることもあるのです。ですので表面麻酔を使って完全に針の刺さる感じや、麻酔注射の圧力を防ぐと言う事は難しいです。しかしより痛くなく麻酔注射をできると言うことです。またこの麻酔注射をより痛くなく打つためには患者さん本人がリラックスしていて、かつこの注射をゆっくり打つと言うことも1つのポイントとなってきます。
2.笑気麻酔
私はインプラント治療を行う際にほぼ全員の患者さんにこの笑気麻酔をすることをお勧めしています。それはこの後説明する静脈内鎮静法などよりも、かなり安全でかつ患者さんにとっては体に全くストレスがない方法だからです。笑気麻酔をするとどのようになるか、笑気麻酔は鼻から酸素を吸っているような状態です。正確には酸素と笑気と呼ばれる2種類のガスを混合したものを鼻から吸っています。この笑気麻酔を鼻から吸うことによって、だんだん体が昼寝のようにポカポカあったかくなって、指先など少しとろんとリラックスした感じになります。完全に気を失うような事はありません。インプラントの治療中は明らかに会話はできるのですが、私の経験上2人に1人ぐらいは、知らない間に昼寝をしています。そして患者さんはあれちょっと寝てしまいましたねとら後から終わった頃にいってきます。軽い昼寝をしているのですが患者さんに、大丈夫ですか、としっかり肩を叩いたりして喋りかければ、すぐふと我に帰って反応して、かなり明確な会話は可能です。自分の意思もはっきりと伝えられます。そしてこの鼻から吸うだけと言うことが非常に簡便なのです。特に何か針を刺したりとか、ずっと点滴をしていると言うようなこともなく、ただ旦か鼻から酸素混合ガスを吸うだけなので、非常に患者さんにとっては楽なストレスのない方法だと考えられます。
そして何より酸素を出し続けているということがとても安全な方法です。インプラントオペ中にはSPO2と言われる酸素飽和濃度を測っています。これは最近コロナなどで散々騒がれたので知っている方も多いかもしれませんが、その人の体が今どれぐらい酸素が十分に安全に供給されているか血液が循環しているかなどと言うことを測ってコロナの程度を評価するというものが全国のいろんなところで行われていました。このSPO2と言う機械もちなみにただ指にはめるだけのものなので非常に簡単で誰にでも一般の方にでもその器具を持っていればすぐ自分の体の安全度を測ることができるようなものです。常に酸素を吸いながら治療を受ける事はとても大事ですがその酸素を体の中に入れながら笑気麻酔をすると言う状況であるので手術中は確実に身体の安全が保たれていると言うことになるわけです。
3.静脈内鎮静法
これはさっきの笑気麻酔よりもよりレベルを高くして本人の意識がかなりない状態になります。腕に点滴を打って手術中はそこから薬を入れて半分眠っている意識のないような状態になります。
先程にも少し述べましたがこれは全身麻酔ではないので完全に意識がなくなってるわけではないです。そして患者さんはただ自分がその時に行われた治療による刺激や痛み、怖さなどそういったことを、はっきりとは覚えていません。ただ実際には患者さんは我々術者から見て、体が急に動いたり、痛いのかなと思われるような首を動かしたりなどの、反応は普通の患者さんと同じように起きます。ですが本人は全く覚えていません。そして私たちが患者さんに喋りかけるとゆっくりと少し反応してくれます。違う言い方をすれば全く反応しないほど深く静脈内鎮静をするのは沈静度が高すぎてかけすぎで良くないと言うことです。
この方法は患者さんにとっては一見とても良い方法にも思えます。特にとても怖がりの人の場合にはこの方法は確かに向いています。しかしより程度の高い麻酔をかけているので様々な問題もあります。まず身体の健康状態に基本的な問題がないかその時点でできるできないなど。また当日歯科医院に自分で車で来た場合、帰るときに車を置いて行かなければいけないと言うことも考えられます。麻酔が本当に十分に切れて安全な体の状態になってから車に乗って帰る必要があるので、場合によっては行きも帰りもタクシーで移動した方が良いかもしれません。あるいは家族の方に送り迎えをしてもらうなど。
4.全身麻酔
インプラント治療を行う際に全身麻酔をするということがあるかと言うと、一般的にはほとんどないです。ただ大学病院で様々な諸事情により全身疾患等があり患者さんの健康などを踏まえ、そのような完全に患者さんが動かないような状態でコントロールして治療しなければいけない場合もあるので、ごく稀ですがそのような方法で対応することもあります。ですが一般の方がこのような全身麻酔を希望してもそれを受け入れてやると言う事は通常考えられませんので、これは候補としてはないと思ってください。
まとめ
以上を踏まえ、私の個人的な意見を最後にもう少し述べたいと思います。インプラントの手術を受ける際には笑気麻酔が私は良いと考えています。まずそもそもその担当医の先生と安心してリラックスして治療が受けられるかなどのコミニュケーションレベルなどがまず必要ではある事はもう言うまでもありません。笑気麻酔はもしあなたがやったことがないのであれば一度やってみてください。お願いするのも1つの方法だと思います。
一般の治療でも歯科医院では笑気麻酔を怖い人には使っていたりしますので。今インプラントの治療技術は大変進歩を遂げているのであまりそもそも痛くなく治療ができる可能性が高いので、静脈内鎮静法までやる必要もないことが実は多いと思われます。ですので体に負担がやや大きい静脈内鎮静法を避けて笑気麻酔の軽度な体にほぼ負担のない方法を選択するのが良いのではないかと考えています。以前でも述べたようにサージカルガイドなどを使ったインプラント治療を行いますので手術部位も狭い範囲で済みますので短い時間で笑気麻酔でインプラント治療を受けるというのが今の現状には合っているのではないかと考えています。安心してください。