こんにちは、お元気にお過ごしでしょうか?最近何人か新しく入れ歯を作る患者さんを拝見しています。その方たちの中で入れ歯の金具が見えるのが嫌なので、ノンクラスプデンチャーと言われる針金が目立たないタイプのものを希望された方がいました。
そのノンクラスプレンチャー、金属の目立たない入れ歯について話をしたいと思います。通常、部分入れ歯の場合、針金で引っ掛ける場所は金属でできていることがほとんどです。どこかの歯に針金で引っかかりを作り、入れ歯を安定させるわけです。最低でも2箇所必要です。普通は2箇所ということはあまりなくて、3箇所以上かけるべきであり、そして理想としては4箇所とかになるかと思います。
さて、この金具の引っ掛ける部分をたくさん作れば作るほど安定しやすい可能性があるわけです。ですが、金属の引っかかりが見えてしまうと嫌だという人もいるのです。特に前歯のあたりに金具をかけるようになった場合、どうしても口元に金具があることが見えてしまい、部分入れ歯を入れている人と言うふうに見られるのが嫌なのでしょう。
そのため、この金属の部分をピンク色の特殊なプラスチックで作る入れ歯があるのです。このような入れ歯のことをノンクラスプデンチャーと呼んでいます。
先程の何人かの患者さんたちは、このノンクラスプデンチャーを選ばれ、やはり歯の表側の見えるところはピンク色の目立たないものでやってほしいと言う希望がありました。
そしてここからが問題なのですが、よくよく聞いてみると、表側だけではなく、裏側にも金具が見えるのがいやで、ない方が良い、金具をできれば入れて欲しくないと言うのです。どうも金具を入れると、金具が自分の歯を痛める、栓抜きのように自分の歯をぐいぐいと痛めていき、いずれは自分の歯が抜けてしまうのではないかと言う不安があるということが聞いていてわかりました。そうすると金具を極力使わず、いやむしろ全く使わず、すべてピンク色のプラスチックで金具になる部分を作ってしまうと言うことになります。そのような入れ歯もあることにはあります。ただこの場合は強度が弱くとても心配です。精度も落ちてしまいます。
そして1人の方はどうしても金具を入れるのが嫌だということで、表側には当然金具が見えないような設計にしましたし、裏側の見えない部分も金具一切入れず、全てピンク色のプラスチックで補強構造を作ると言うタイプとしました。この入れ歯の問題点は先ほど言いましたように、精度がやや劣る、だんだんすり減りやすい、後々の補強や修理が難しくなるなどということを理解された上で、それでも心配だから金属を入れないでほしいということで進めていきました。
一方また数人の方も、このノンクラスプデンチャーを選ばれたのですが、それらの方は話し合いの結果、裏側には補強の金属を入れると言うことで理解納得していただけました。つまり、表側の目立つところ、前歯のあたりだけはピンク色のプラスチックで金具が見えないような構造とする。しかし裏側には補強構造でしっかりと金属を入れて安定させる、その方が丈夫であり、精度も高くなり格段と良くなるから。また奥歯の方にはしっかりとした金属でひっかかりを作る。
入れ歯の設計と言うものは色々とあります。これは歯科医師自身が考え、そして歯科技工所の歯科技工士と相談をして決めて、最終的な形を決めるのが良いと私は考えています。毎朝、昼、歯科技工士が何人も医院に訪れたす。打ち合わせ、確認のためです。歯の模型を持ち、話し合います。患者さんの希望も踏まえ、ある程度はそれを反映させることも良いのですが、最終的には歯科医師、歯科技工士が十分に打ち合わせた上でどのように作るのかということを決めないと良いものを作る事はなかなか難しいです。そして現状、ベストなのはやはり補強構造は一部金具を入れるべきです。入れ歯と言うものはその人一人ひとりによってどこの歯が残っているのか、どこの歯が強いのか弱いのか全く違います。ですから、そのようなことを十分に踏まえて作っていく。そして目立つことが心配な方は、一部だけピンク色のノンクラスプデンチャーの材料で作るというのが良いと思われます。