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A smiling woman with beautiful teeth

子供の矯正治療と姿勢について

2023年9月7日

よく多くの保護者の方からこの子は姿勢が悪いと言うことを聞きます。歯並びも悪いしいつも顔を曲げているし、姿勢が悪いですと聞きます。

実は正しい呼吸ができていないと姿勢は悪いです。前回にも話しましたが、正しく腹式呼吸ができていれば姿勢は良いはずです。ですが腹式呼吸ではなく口を開けていたり胸や肩のあたりがよく動く胸式呼吸をしている子が多いのです。

正しい呼吸ができていないと十分な酸素が取れておらずそのために体は呼吸困難のような状態になり何とか無理して頑張るために、呼吸補助筋を使って呼吸しようとします。そのため体の骨を曲げて何とか気道のスペースを広げようとしたりするために、結果、肩の高さが左右で違ってきたり、頭が前に出たり、背骨の上が曲がったりと言うような不思議な姿勢にいつもなってしまうのです。

これが腹式呼吸ができていないと姿勢が悪くなっているよーと言うことなのです。しかし当院での筋機能療法の矯正治療を受けた子供たちは指導をしっかり守っていれば、顎や舌の位置が正しい位置になるために6ヶ月もすれば頸椎の湾曲は改善されていきます。

では腹式呼吸のポイントに関して少し話したいと思います。

  1. 1.立っていても座っていても姿勢はまっすぐ
  2. 2.3秒で吸って3秒で吐く
  3. 3.吸うときにお腹は前に出し、吐くときにへこませる
  4. 4.鼻息は聞こえず、静かな呼吸である

実際に私たちが患者さんを見ているときには、姿勢はどうか、まっすぐかどうか見ていますし、口を閉じて鼻で息をしているかを見ています、そして呼吸のスピードが早すぎると言う事は無いだろうか、呼吸が激しく強くなっていない、マイルドであるか、お腹の動きはどうか、リラックスした呼吸であり力んでいないか、呼吸とともに体が揺れていないか、などを何となくふわっと見ています。

このように腹式呼吸についてしつこく語っていますが、歯並び矯正をすると言う事は単に歯を治すと言うことではなく、そもそもの原因を多角的に治せる素晴らしい治療なのです。健康な体もっと言えば強い体を獲得できるし生理学的に美しい体に近づくと言う魅力的なものなのです。

ですのでただ単に姿勢が良いとか悪いとか、本を読むときに寝転がっているとか目が近いとかそういうことだけをアドバイスしているわけではありません。身体の健康発育に重要な腹式呼吸を改善することによって歯並びも良くなり姿勢も良くなる、一体となっていると言うことをお伝えしたいのです。そして保護者の方にとってはもしかしたら耳の痛い話ですが、保護者の方があまりにも腹式呼吸ができていない口呼吸をもろに子供の前で見せていると言うのはあまり良い影響ではないので、子供に渡しているプリントの中にそのようなことがしっかり書かれていますので、保護者の方もぜひ参考に自分の健康に留意してほしいと思っています。

ちなみに大人になってからこのようなことをトレーニングして改善していく事は実は極めて大変です。子供は、何となく想像つくと思いますが、柔軟です。一方大人は完成した体です。ですからすでについてしまった癖を大人になってから治すと言うのはとてもハードなリハビリなのです。ですがもし子供と一緒に頑張れるならそれは素晴らしいです、そして他の新たな楽しい親子関係ではないかと私は思います。

Side view picture of woman's smile with clear dental braces on teeth against blanked background

子供の矯正治療と腹式呼吸について

2023年9月3日

当院では矯正治療をする際に、そもそも歯並びが悪くなる原因を除去することを目指しています。歯並びを治すと言う事はある意味何らかの装置をつければいつかは治る可能性が高いです。ですがただ治しただけではまたいつかだんだん後戻りしていく可能性もあるわけです。では後戻りしないためにどうしたら良いかと言うと、ずっと何らかの押さえるような枠の装置を常に作り続けて費用をかけて経過を見ていくと言うことです。

ですがそのようなことをせず、原因が除去できればいいわけです。ややこしい話ですが装置をつけただけであれば、結果として曲がっているものをまっすぐにすることができるのですが、そもそもの原因は治していないので、装置を外せばまたずれてくるかもしれないのです。

この話を何度となく矯正のスタートの時点にすべての患者様にお伝えしていますが、矯正治療が終了に向かい2年ほどしてこれだけきれいになったんだ、良かったとなったときには、昔の事は忘れ油断してしまいます。私は何度も口酸っぱく、いつも口を閉じて言いなさい、鼻で呼吸してください、舌はスポットにつけていて下さい、親知らずが生えてくるときには抜いた方が良い場合があるから油断しないでね。と言っています。

さて、様々な処置、器具を使って歯並びを治していくのですが、その治療と並行して原因を除去するための指導を厳しく行っています。その一つが腹式呼吸です。現代人は残念ながら多くの人々は腹式呼吸ができていません。もしあなたが歌とかを専門にやっていたり、合唱部などでトレーニングを受けていれば、しつこいほど腹式呼吸の重要性を聞いているのではないでしょうか。人の体はそもそも鼻で呼吸するように設計図ができています。正しい体の使い方をせず口を開けて口を呼吸していると言う事はとても不健康であり、もっと言えば危険な状態と言うことです。そしてこの口呼吸をしているために歯並びが悪くなっていくのです。ここに大きな原因が存在しています。鼻呼吸の確立をまず1番に指導しています。この鼻呼吸がうまくいくためには腹式呼吸が普段できているかと言うことなのです。もしあなたが小学校1年生の教室に行って前の方から子供たちの顔を眺める機会があったらよく見てみてください。ほとんどの子供が口を開けて口で息をしています。これはとても恐ろしいことなのです。どうしてか、口で息をしていれば風邪もひきやすいしアレルギーにもなりやすいです。体が病気になりやすいです免疫力も上がらないです。いつもぽかんと口を開いていて、それでいてこの子たちに一生懸命勉強を教えても本当に成果が出るのでしょうか。このような口呼吸の状態で様々な運動がんばっても本当に強い選手になれるのでしょうか。それは皆さんもよくわかってくれると思います

ではさらに話を進め、鼻で息をすることが大事だと言うのはなんとなく気づいていたと思うのですが、正確に言うと腹式呼吸をしてくださいと私は言いました。鼻で息をしていても、腹式呼吸でない場合があります。そのような子も結構見受けます。簡単に言いますと口でいつも呼吸している子に、口を閉じて鼻で息をしなさいと言うと、胸式呼吸になります。胸のあたりや肩のあたりが上下に動いて一生懸命胸式呼吸を始めます。これでは腹式呼吸でないので長続きしないですね。そしていつしかまた口を開けると言うことになるわけです。そもそも胸式呼吸ではダメなのか?ダメなんです。それは胸式呼吸は肺の3分の1しか使っていないのです。ですので呼吸が浅いです。そうすると脳は酸素不足と判断し、呼吸が速くなりますそうすると鼻呼吸もうまくできず口呼吸になってしまいます。そして何より気道が狭くなってしまいます。そしてさらに呼吸が浅くなると言う悪循環を繰り返していきます。

ですので私たちは腹式呼吸を基礎中の基礎として子供たちに一生懸命練習させています。毎度腹式呼吸を自然体でしているのかをチェックしています。言われた時だけうまくやろうとしても普段から自然にできていなければすぐにおかしな呼吸になりばれてしまっています。

Closeup of a mouth with braces on teeth

子供の矯正治療と開始時期はいつがいい?

2023年8月31日

先日あるお母様から5歳のお子さんに関して矯正のスタート時期はいつが良いのでしょうかと言う質問がありました。これに関しては今まで私がここに何度となく書いていますが、理想は小学校1年生の4月です。このお子さんはお姉さんが小学校2年生ですが、お姉さんと一緒にスタートすることとなり小学校1年生となるまでは練習でお姉さんと一緒にやろうと言うことになりました。すなわち本格的なスタートは小学校1年生で1年間はお姉さんの横にいてちょっとだけお姉さんと一緒に練習してみようと言うような状況です。

前回に話した小学校1年生4月がスタートとして理想であると言うのは、子供のモチベーションのコントロールにおいて理想的であるからだと言う理由を伝えました。今回は別の理由に関してお伝えしていきたいと思います。

それは何かといいますと、体の成長と関係があります。矯正治療をすると言う事は、悪い習慣により顎がずれたり、歯が曲がっている、筋肉のバランスが悪い、筋肉が弱い、呼吸が間違っている、口をいつも開けている、鼻で息ができない等を是正することではあるのですが、その是正を通じて骨の歪みも一緒にできれば治していきたいわけです。

それを考えた際に、実は顔の真ん中あたりのことを中顔面と言いますが、この中顔面が出来る限り球体の形に成長を促進することがとても成功のカギです。顔の真ん中辺、中顔面が一番成長を促進できるのは、小学校1年生から3年生位なのです。この時期が成長のピークで最も成果が出やすい時期なのです。それを過ぎるとあまり今度は成長の余地がなくなりあまり形を変えるのは難しくなります。すなわちはが並ぶ元となる土台の骨の形、顎の形を出来る限り理想的な球の形にしたいのですがそれがこの時期だと言うことなのです。速すぎても遅すぎてもだめなわけでは無いのですが、最も成果が上がりやすい時期と言うことです。特に東洋人の場合、中顔面の骨の成長が弱いと言うことが近年ではよく指摘されています。

以前映画で阿部寛主演のローマのお風呂の映画がありました。この映画の中では東洋人の顔を平たい族と表現していました。顔が平べったいと言うことです。そして西洋人は横顔から見たときに前後的に長い立体の顔をしています。一方、西洋人の顔は球に近い形なのです。この平たい顔では立体の球にはあまり近くないですよね、このような状態にはならず、横顔から見たときに立体感のある球の形の顔になってほしいのです。

実はこの形に究極的に近づけたい場合にはもう生まれてまもなくからできる努力があります。母乳が終わった頃にすぐに前歯噛みを始めることです。離乳食は食べないです。よく考えてみてください。離乳食と言う商品が世の中に出回っていない昔には誰も離乳食は食べていないのです。大人が食べているものにほぼ近いものを食べていたのです。子供だから柔らかいものを食べさせないと食べられない、歯がないから噛めないのではないか、と考えがちですが、実は昔は大人と同じものを必死に1歳児が前歯2本程度もしくはその周りの土手で噛んで食べていたのです。これをひたすら行うと立体の丘に近づいていきます。

話を元に戻しますが、体の成長を考えてどの時期にスタートすると良いかと言うことでした。もしあなたのお子さんがその時期を過ぎていた場合どうすべきかと言うことに関してお話ししますが、過ぎてしまったから全くダメと言うことではありません。その中で出来る限り良い状態になることを考えます。専門家ではない皆さんから見た場合、見た目で言えば十分に治っていると思う程度まで改善はできます。ただ我々専門家から考えると土台が十分に良い形になっているか、呼吸や舌の位置が正しい位置になっているか、などのこだわりを考えた際には、やはりどうしても差があると言う仕上がりになっています。遅いと言う事は無いのですが、もし正しい知識を持っていて理想の時期にできるのであればそれを行うべきです。もし時期を過ぎていれば可及的速やかに対策を打つべきです。そして足りない部分をどのように出来る限り補うかを考えます。

また時期が遅くどうしてもズレが大きい場合には歯を抜いての矯正治療になる可能性があります。歯を抜いてやることが悪いわけではありませんが、多くの方ができれば抜かないで治るならそうしてほしいと言う希望が多いことも事実です。すなわち、きれいにしたいと言う気持ちもあるししっかり治したいと言う気持ちもあるのだが、抜くのはちょっと心配かなと言う気持ちもあるのです。人間だからいろんな気持ちがあるのが普通だと思います。その中で最も自分らしい生き方はなんだろうと言うことを検討していくことになるかと思います。

子供の矯正と子供のモチベーション

2023年8月27日

前回子供の矯正をしていく上で、矯正治療を受けているのは子供自身であり、子供自身が変わらなきゃ、と思えるように持っていきたいと言うことをお伝えしました。今回はそれをさらに深掘りしていきたいと思います。

子供自身がこれもうちょっとやってみたいなー、もっと良くなってみたいなーと言うようなモチベーションにつながるような状態にしたいわけです。
具体的には装置を決められたように毎日家に帰ってから1時間入れてね、口を閉じて鼻で息してね、

舌はスポットに付けていてね、など指導するのですが、この時に子供のモチベーションが高いのか低いのか、これは治療の成果に大きく関わってきますよね。

ここで1つ我々が指導していく上で重要なことを皆さんにお伝えしたいです。これはかなり重要なことですが多くの方が残念ながらこのことを保護者の場合は理解していません。ここは子供の運命の分かれ道と言ってもいいです。それは何かといいますと、子供の矯正治療はいつからやるべきなのか?それはきっぱりといいますと小学校1年生4月です。ほぼこの時期から始めてください。その子の人生が大きく変わるといえます。いろんな保護者の方がいますが、4歳5歳位からあるいはもっと言えば1歳2歳から出来る限り子供の健康考えて通っている方もいます。当然このような場合、当院の予防クラブのプログラムで対応していてそこで予防矯正を6歳までは行っています。そして小学校1年生から矯正をスタートしようと言う計画を事前に何度も本人にもイメージさせています。

どうしてこの時期なのか?もっと小学校6年生や中学校2年生位でも大丈夫なんじゃないか?と言う保護者の方が結構いるのですが、今回話しているモチベーションのコントロールに関しては、小学校1年生が医療者側からすればベストなのです。私たちは子供自身が自律的なモチベーションを持ってやってくれる状況を出来る限り生み出したいのです。本人が自律的なモチベーションを持ったときには最強の結果が出ます。このモチベーションのコントロール、医療者側からすれば小学校1年生がベストなんです。これは様々な心理学的な背景の中から出ている結論です。

大人の言葉が理解でき、様々なアドバイスを実際にやる際にその行動を形にできる程度の理解力がある、かつ精神年齢がそこまで発達しておらず自我が強くないために大人のアドバイスを聞き入れやすい。と言うことなのです。と言う事はこれがだんだん学年が上がり3年生4年生そして5年生6年生と思春期に近づいていくと、どんどん賢くなり大人が言うことに対してそれって本当なの?と実は心の中で思っていたりします。そうするとモチベーションのコントロールはどんどん難しくなっていくのです。

今回はモチベーションのコントロールに対しての理想的な時期と言うことで話をしました。実は他にも様々な要因があるのでそれはまた後日伝えたいと思います。

またモチベーションには2種類あり、1つはこれをやったらゲームを30分やっていいよと言うようなタイプのモチベーション、これは短期的な効果しか得られません。もう一つは自律的なモチベーションで、自分から行動できるようになるよう仕向けますこれこそが最強のモチベーションです。

そのために私たちは毎回こうしてください、と、単に指示をするだけではなく、本人と対話します。本人と相談をします。すなわちどうしたら自分ができるのか自分なりにいつだったらやれると思うか、あるいはどうしてやれなかったのか、どうしたいのかなどを根気よく引き出していきます。

Portrait of a cute little girl looking at her teeth after doing teeth surgery in a pediatric stomatology while sitting in stomatology seat.

子供の矯正治療と本人のやる気

2023年8月24日

当院ではよくお母様とお子様が歯並びの相談に来られます。これは子供に例えば、水泳を習わせたらいいんじゃないかと思って、スイミングスクールに行くわけですね。そしてスイミングスクールを見学して子供と確認しあってじゃあここでがんばってみよう、となるわけです。

そうなるとですね、矯正治療を受けているのは子供自身なのです。当たり前のことですが、保護者がどんなに手助けしても、その手助けはある程度しかできないんです。ただ勘違いして欲しくないのは保護者が全く関係ないとか手伝うことができない、協力ができないと言うことでは無いのです。保護者が子供に気をかけてあげたりプラスの言葉を投げてあげたりそのような事は極めて重要です。ですが矯正治療を受けているのは子供自身であり、その子供自身が多少は頑張らないと成果が出ないと言うことです。ごくまれにですが勘違いしている保護者の方がいます。それは歯科医院に行って矯正治療さえ受ければ何とか治るんじゃないか?装置さえ入れていればだんだん治っていくんじゃないか?そのように単純に思っている方がいます。

これは違う例で言うと、ピアノ教室に通っていて、通いさえすればだんだん上手くなっていく、2年も経てばそこそこ弾けるようになる。と思っているわけです。あるいは違う例で言うと、学習塾に行って子供を送り届けさえすれば子供は勉強ができるようになり成績が上がる。果たしてそうでしょうか?そうですよね皆さんよくわかってらっしゃいますよね、決してそんな事はなくて、それなりに家でピアノの練習をする必要がありますし、家で宿題をやったり努力をして初めて十分な成果が出てくるわけです。そしてその成果は個人個人違って全員同じ結果になるわけがないです。

話を戻しますが矯正治療を受けているのは子供自身であり、私たちは子供にも一生懸命アプローチしていくわけです。すなわち歯科医院に来てその場で何とかなるとは思っていないわけです。家でやるべき努力、家でやってほしいことを本人に伝えていき、子供ですのでただ単にやれと言えば良いと言うことではなく、その人の成長度合いに合わせ始動、アドバイスをしています。

特に気持ちの上で、子供自身が変わらなきゃ、と思うようにすることを考えています。子供が単に親がやれと言ったからやるわけでもないですし、ドクターがこうしなさいと言ったから全くその通りにやると言うわけでもないです。人間だからそうですよね。

そのために私たちは、子供が自ら行動しやすいようにいくつかの点を気をつけて付き合っています。

  1. 1.ポジティブな声掛け
  2. 2.楽しいと思わせる
  3. 3.習慣化の手助けをする
  4. 4.自宅でマネージメントできる目標設定をする

このようなことを気にかけモチベーションにつながるように考えています。

little girl at a Children's dentistry for healthy teeth and beautiful smile

矯正治療と歯並びの原因について

2023年8月20日

歯並びが悪いことを専門用語では不正咬合といいます。不正咬合に関して様々な研究がありますが、5歳から17歳を対象に調査した場合に88%が不正咬合であると言う結果があります。すなわち10人中9人は不正咬合、歯並びが悪いと言うことです。皆さんこれをどう思いますか?一方でアフリカなどで未開拓地の住民を調査したデータなどを見ると不正咬合の人はかなり少ないと言う結果が出ています。ここから読み取れる事は何かといいますと、文明生活が不正咬合を生み出しているのではないかと言うことです。

文化人類学的にもこのような調査は世界的に行われていますが、先進国にこそ不正咬合が多いと言うことがわかっています。前回にもお伝えしましたが、われわれは現在生活の中でとても柔らかい食事をしています。その結果、顎の筋肉や骨が十分に成長せず歯はうまく並ばないのです。
このような顎の筋肉や骨が十分に成長していないことを、専門的な言葉で、筋機能障害といいます。筋機能障害と言うとかなりなんだか難しい言葉に聞こえてきますよね。筋肉を機能として十分に使っていないと言うことです。すなわち昔はもっと硬いものを一生懸命必死に何回も何回も噛んで食べていたんだけども、最近では柔らかくてしかも飲んだりすれば十分に栄養がしっかり取れたりする、そんな便利な生活を送っているために必死のトレーニングを放棄してしまっているわけです。

そのために筋機能療法を行う必要があると言われています。筋機能療法とは、筋機能のエクセサイズを行い強化することです。ごく簡単に言ってしまえばしっかり噛むと言うことです。しかし歯科医療で歯並びを治すと言う意味においてはそのような簡単なことでは治りません、と言うのは筋肉と言うのは噛むための筋肉だけではなく他にもいろんな筋肉があるのです。それは例えば唇の中にも筋肉はあります。例えば舌も筋肉です。舌をどのように使っているかとても重要な関係があります。歯並びと舌って関係あるのか?と思われる方もいるかもしれませんが、とんでもありません。かなり関係があります。

さて当院ではこの筋機能療法である口の周りの筋肉や呼吸等を正常な状態にするためのエクセサイズを矯正する場合には必ずセットで指導しています。これには重要な根拠があります、それはある論文によると矯正治療を行った際に、矯正器具のみをつけていた治療では84%に何らかの後戻りが起こると言う報告があるのです。一方で矯正装置とこのエクセサイズを両方行った場合には、36%の後戻りがあると書かれています。

ここからわかることは装置をつけて歯を動かす事は確かに重要なのですが、それ以上に顔の周りの筋肉のエクセサイズをしっかりとマスターしていくということがかなり重要だと言うことです。むしろそれを全くやらないとなるととても心配な状況になっていますよと言うことです。
これはちょっと違う例で表現しますと、このようなことになるかと思います。野球のクラブチームに入って上手くなりたいからと言うことでとても性能の良いバットとグローブを手に入れていつも練習していること。ところが性能の良いバットとグローブを手に入れただけで、それを試合ごとに使うだけで果たして良い成績で活躍できるでしょうか?そうでは無いですよね。確かに良い性能のバットやグローブがあった方が良いのですが、当然それを用いてしっかりとした練習や筋トレなどや走り込みなどをしていない選手が良い成績が残せるわけがありません。

さてまとめに入りますが今回お伝えしたいこととしましては、歯並びが悪くなる原因は現代生活にあり、それは小児期にあり、現代の生活を送っているからと言うことです。そして具体的には顎の筋肉などが十分に発達していないと言うことです。そして親がいびきをかいて寝ていれば子供もそれを真似して間違った生活習慣をしてしまう可能性があると言うことです。そしてそのような悪い歯並びを改善していくためには、単に装置を入れれば良いと言うことではなく、正しい体の使い方、筋肉のトレーニングをエクセサイズをもう一度学び直す必要があります。それこそが最も矯正治療の重要なポイントであると言うことです。

よく患者様はどのような装置で治療するのか、その装置が痛いのか痛くないのかと言うことを一生懸命聞かれますが、それで良し悪しを判断するというのはとてもバランスが危ないです。

close up of woman wear brace and touch her face

矯正治療と遺伝について

2023年8月17日

歯並びなどは遺伝の要素が強いと思っていませんか?例えばお母さんが出っ歯だから娘も出っ歯になった。お父さんは下顎がとても出ているから、この子もしゃくれたような顎が出たような顔になった。このような話を時々患者さんから聞きます。そして多くの親が、特にお母さんが、私が子供の頃歯並びが悪かったのできっとこの子も悪くなるのではないかととても心配です。と言って来ます。

そうですね、以前は歯科医学的に歯並びや顎の形等は70%位遺伝の要素で決定すると言うふうに考えられていました。しかしその後、遺伝の要素はそんなにないのではないかと言う研究が進み、そのパーセンテージはなんと30%位ではないかと言う論文が出てきたのです。さらに現在では遺伝的要素が10%位ではないか、あるいはもっと低い、あまり関係がないと言う論文さえ出てきたのです。親子は当然ですがDNAを半分ほど共有していますので似たような顔になるのではないかと考えられる、のですが、これが実は結構思い込みであるということが近年ではわかってきています。確かに遺伝で親子が似ると言う要素もいっぱいあるのは事実であり間違っていません。

しかしここからがちょっと難しいところでして、出っ歯であるとか歯並びが凸凹している、顎が小さい、あるいは大きい点などに関しては、実は遺伝的な要素はほとんどなくて、生まれてからの生活習慣が大きく影響しているのです。

現代人はどうして歯並びが悪くなるのか?と言う事の研究がだいぶ進んできています。
その原因はかなりわかってきていて、生まれてからどんなものを食べているのか、すなわち我々現代人は現代生活の中でとても柔らかいものを食べています。その結果、顎の周りの筋肉は発達しない、しいては顎の骨自体もあまり成長しないと言うことになり、歯並びがガタガタになっていったりするわけです。

また多くの子供たちは鼻で呼吸せず、口で呼吸をしています。この口呼吸の習慣が、生活が、とても問題です。本来人間の体は鼻で呼吸するように設計されているにもかかわらず、口を開けて口で呼吸しているのです。そうすると舌の位置もおかしい位置となり、口の中で舌があさっての方向へ力をかけて、あごや歯をずらして行きます。そのために上顎が十分に大きくならず下顎だけが前に伸びてしまっているかのような状態の顔になったりしている子もいます。

この口呼吸をどうするか?なのですがこれに関しては、例えば十分に母乳を飲んでいないで育ったと言うことが因果関係があるとも言われています。

ともあれ現在生活の中で子供たちは様々な弊害を抱えて不十分な成長になってしまっていると言うことです。また親子で似ると言うことに関していいますと、それは親がいつも口を開けていれば子供も口を開けているような呼吸をするようになります。生活習慣が親子で似ると言うことです。ですので決して遺伝では無いのですが、後天的な生活習慣の中で、親子が一緒に過ごし、親が間違った呼吸法であるとか発音をしていれば、子供もそれに似通った体の使い方をしてしまいます。その結果歯が出っ歯になったとして、いかにも親子だから遺伝だと思ってしまうわけです。

ここで皆さんによく学んでほしい事は、歯並びは必ずしも遺伝ではないと言うことです。遺伝だから仕方がないと言う事は実は間違っていると言うことです。親が毎日いびきをかいて寝ていれば、いつしか子供もそれが普通だと思い口を開けていびきをかいて寝るようになったりする可能性が高いです。

そういう意味において子供の矯正治療をする際には、できれば親も一緒に生活習慣を見直してみるのが良いきっかけであると思っています。

Young beautiful woman holding dental aligner orthodontic to teeth correction with happy face near mouth

ドクターから見たマウスピース矯正とワイヤー矯正どちらが良いか?

2023年7月16日

前回、患者様よりワイヤー矯正かマウスピース矯正かどちらが自分に合っているのかと言う話をしました。今回はさらに患者様自身のパーソナルな都合ではなく医学的に見てドクターがどのようにそれを判断していくのかと言う点をさらにお話ししていきたいと思います。

実はその患者様のお口の中の状況において、明らかにこれはワイヤーでやるしかない、もしくは明らかにこれはマウスピース、インビザラインなどでやった方が良いと言う2つに分かれる場合があります。またどちらでもほぼ同じの同等の結果が得られるであろう、という場合もあります。もっと特殊な例としてはワイヤー矯正とマウスピース矯正のコンビネーションをやったほうがいいと言うような場合もあります。ただほとんど多くの場合はワイヤーでもマウスピースでもどちらでもいけると言う診断になる患者さんが圧倒的に多いです。

ですが専門家として歯並び、噛み合わせを見ていく上で、この場合はマウスピースの方が有利であろう、この場合はワイヤーの方が有利であろうと言うことがありますのでそれをお伝えしなければならないシーンもあるのです。ですからもしあなたがマウスピースを希望していたとしても、私が歯科矯正的にどちらのほうが有利であると言うことがある場合には、例えばやはりワイヤーにしたほうがいいと思いますよと、お伝えしてお勧めします。逆にそんなに多くは無いのですがこれはマウスピースでやったほうが有利ですよと言う場合もあります。それはどんな場合かと言うと顎の関節に負荷がかかりすぎていて、顎関節症になっていたりもしくは顎関節症になりそうであったりと言うような場合が考えられます。このような場合は顎の関節に負荷を与える事を考えマウスピースの厚みが約1ミリから2ミリほどあり顎関節のクッションとなるマウスピース矯正を進めていることがあります。

またかなり専門的な話になりますが歯を抜いての矯正の場合には針金の方がワイヤーの方が良い場合が多いです。ですがこのようにここには書いてますがそれでも歯を抜いているにもかかわらずマウスピース矯正でも十分に成果が出る場合もこれまたなんとあるのです。ですのでせっかくやるなら目立たないマウスピースが良いと思っている人でもワイヤーではなくてマウスピースでも充分同等の結果が得られると言う場合もありますのでこれ本当に非常に微妙な話なのです。ですからいろいろなところであなたはどういう方法が良いかと言う情報を得ているのではないかと思いますが、一人一人ケースバイケースだと思ってください。またその矯正の先生がどちらが得意なのかと言うことにも影響がある場合があります。

すなわち例えば、インビザラインなどのマウスピース矯正が得意な人の場合はまず目もっててマウスピース矯正を全面的に進めてくる可能性が高いですし、マウスピース矯正しかやっていないと言う矯正歯科もある位ですから、そうなるとどちらが良いと言うよりはマウスピース矯正で何とかならないかと言うところからどのように歯を動かすべきかと言う治療計画になっていくわけです。一方で矯正の専門医でワイヤーを中心に行っている人たちはあまりインビザラインなどのマウスピース矯正をやろうとはしません。それは1つには大学病院などの矯正歯科ではマウスピース矯正は一般的に行われていなく針金を使ったワイヤー矯正が中心ですのでそのテクニックを駆使したやり方をすることになると言うことなのです。このようなことから非常に患者様にとっては紛らわしい情報が起きているということなのです。

ここから私の個人的な意見を言います。マウスピース矯正、ワイヤー矯正それぞれに得意な動かし方があると言うことがわかっています。ですのでどちらがより有利であるかと言う事は50/50で検討すべきです。その中で明らかにワイヤーの方が有利であるとか、明らかにマウスピースの方が有利であると言うことであればそちらの道に進んだほうがいいです。また4対6くらいの差であれば自分の好みの方を選ぶのも手だと思います。

このようなことからよく相談して話し合って、どの方法で行くのかを決めると言うことをしっかりやるべきです。自分がどのように思っているのか、自分がどのように考えているのかと言うことも重要なのですが、どちらが有利な動かし方となるのかということも検討する必要があるわけです。

そして私は患者さんの希望をよく聞いた上でその希望に沿ってやった方が良い場合はそれを後押しますし、希望に沿わない方法になる場合にはどのような違いがあるのかと言うことを今一度説明しますし、さらに明らかに希望と違う方法に行くしかないと言う状況であれば、もうこちらでやるしかないですよと言うことをきっぱりと伝えています。

そしてさらにこのように散々最初に治療計画を立てても実際には人間の体ですから思ったように全てが動くわけでもないです、そして途中で治療計画を変えてワイヤーからマウスピースに変わったりマウスピースからワイヤーに変わったりと言う患者さんも実際に何人も私も経験しています。

そういう意味において自分の意見を言う事、そしてドクターの意見を受け入れると言うこと、そして予定通りに必ずしも進行するわけでもなくそこから治療計画が大きく変わることもあり得ること、それを受け入れていくと言うことが自分の体にとって最善となると言うことなので、理解してください。

white smile with curvature tooth of young woman on background in studio

マウスピース矯正かワイヤー矯正か?

2023年7月13日

こんにちは先日患者様で、マウスピース矯正にしたいのだが自分の場合はワイヤーの方が合ってるのかマウスピースの方が合っているのかどちらがより適していると言う事はあるのでしょうか?と言う質問がありました。

そうですねよくある質問です。成人の方の場合多くの場合は、マウスピース矯正、インビザラインなどを希望される方が多いです。それはあなたも何となく想像がつくと思いますが、針金が目立たなく見た目的に良さそうと言うことです。後は歯磨きもそんなに大変そうじゃないし、とか、痛くなさそうだし。このような意見がよく聞かれます。一方で成人の方でも、私はワイヤー矯正の方がいいですと、希望される方もいます。

それでその人にどうしてあなたはワイヤーの方がいいと思われるのですか?と聞くと、食事の準備とかしたときに味見をするのだけれども味見をする際にいちいちマウスピースを外したりとか何か自分にはめんどくさい気がする。との事でした。マウスピース矯正の場合は、毎日24時間のうち少なくとも20時間以上は装着していることが必須です。そうするとマウスピースを外して良いのは4時間と言うことになるのですが、安全域を考えれば22時間は見ていたほうがいいと思います。

それでどんな時にマウスピースを外すのか、と言えば、まずは歯磨きをする時、です。毎日3回歯磨きすると思うのですが、その際は当然マウスピースを外して自分の歯を全て磨きます。これもし仮に1回歯磨き15分、ちょっと多めに言っていますが、かかったとして3回やったとして45分外していると言う計算になります。そして後、食事1日3回外したとして食事の時間が仮に1回20分だったとします。そうするとそれで1時間ですね。合計1時間45分と言うことになります。これなら確かに22時間以上入れていてとても安全なようにも思います。

しかしどうでしょう?途中でお茶飲んだりちょっとコーヒー飲んでお菓子少し食べてなんて時間もあると思いますそうするとやっぱりそこにプラス30分ぐらいはなんだか外しそうに思いますよね。さらにですね、もし週末に今日は友達とレストランでご飯を食べるなどと言う状態になった場合、1時間は外してますよね、多分。もしかしたら豪華なディナーをあなたが食べるとなると2時間そこで外すことになるかもしれません。2時間コースです。そうすると1日あたり絶対に必須として入れていておいた方が良い時間20時間ギリギリと言う状況が生まれる可能性があります。

このようなことを様々検討していくと、24時間のうち20時間以上本当に入れてられるような生活スタイルなのか、そしてもっと言うと自分自身が20時間ちゃんと入れていられるような性格なのか?のようなことを検討していくことになります。そしてなおかつ一方でワイヤーでも色々と検討しなければならないことがあり、それは針金を入れた状態で食事をしますし、その針金を入れた状態でその上から歯磨きを丁寧にすると言うことです。すなわち歯磨きの時間はもし5分かかるとすれば、プラス5分かかって10分かかるよと言うことです。しっかり歯を磨いてなければ虫歯になるリスクもあるでしょうし歯周病になるリスクも出てくると言うことなのです。その両者をよく想像してみて自分にはどちらが良いのかと言うことを考えてみる必要があるわけです。

今ここで書いた事は患者さん目線からの自分がどちらに合っているのかと言う話です。すなわちドクターからどちらがあなたの場合は良いのかと言う話ではないです。

ここ重要です。

自分の生活やスタイルや、自分の性格、今まで自分がどんな行動してきたと思うか、また今後の自分の仕事や余暇においてどのような状況でいたいのか。そのような自分自身のパーソナルな見地からどうしたら良いかと言う話をしているのです。

そしてその自分の意見としてはどうだと言うことを一応踏まえて、次回医学的にドクターから見てどうなのかと言うことも考えなくてはいけないのでその点についてさらにお話をしていきたいと思います。