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Elderly woman coughing

インプラントと誤嚥性肺炎について

2023年6月22日

先日訪問診療を行った際に、施設の方からインプラントと誤嚥性肺炎の関係に関して質問がありました。その患者様はインプラントを入れていて肝心なところにはかぶせ物の歯がしっかりと入っています、そのインプラントを土台としてさらにその足りないところに部分入れ歯が入っているような状態です。

施設の方によると、しっかりと前歯が入っているので、他の利用者の方に比べるとしっかり食事ができているように思いますが、やはり口腔ケアをしっかりしないと誤嚥性肺炎になってしまうのでしょうか?インプラントでも?

今回は誤嚥性肺炎に関して少しばかりお話をしたいと思います。

誤嚥性肺炎とは

まずそもそも誤嚥性肺炎とは何でしょうか?この言葉はここ数年よく皆さんも聞くのではないでしょうか。日本人の死亡要因のトップ3にはよく誤嚥性肺炎から来る肺炎肺炎が死亡リスクとして高いと言うことがわかっています。単に肺炎になっているわけではなく、様々な病状の終末期において、あるいは突発的に、誤嚥による肺炎になることがとても多いのです。ですので誤嚥性肺炎にはぜひとも気をつけたいところです。

一般的に食べ物を飲み込むことを嚥下といいます、それに対し嚥下をうまくできないような状況のことを誤嚥と言っています。健康な人の場合食べ物を口から摂取するわけですが、その口から食べたものは食道へいき、胃へと体の中に取り込まれていきます。が、飲み込みがうまくいかない場合すなわち誤嚥の場合はどうなるかといいますと飲み込むために使う喉や首の周り、顎様々な筋肉がうまく調和して使われずに食道の方へいかず、気道の方へ入ってしまうわけです。気道のほうに入ると言う事はそれは食べ物や飲み物が入る方では無いのです。そこは空気が通る道ですので、すなわち気道の先には肺がありまして、肺の中へと余計なものが入ってしまうと言う状況です。そしてこの肺に入ったときに一緒に食べものと一緒に余計な菌が入っていき、菌が繁殖してしまい全身に回ったりすると言うような状況が起きてしまうと言うことです。これが誤嚥性肺炎です。

誤嚥性肺炎を防止する方法

誤嚥性肺炎の防止のためにはお口の中をきれいにしておくと言うことが、まず基本的にあります。

先程の質問にあった施設の利用者の方には毎週1回、歯科衛生士が訪問をしてお口の口腔ケアを行っています。すなわちお口の中の菌、余計なものが体の中に入っていかないように常に気をつけているわけです。

もちろん毎日歯磨きをしているのですが、高齢者になるとなかなか自分のお口の中の口腔ケアも自分にはできない場合も考えられますので、歯科衛生士がお口の中のしっかりとした掃除をすると言うことが安全面では非常に重要な策となります。ここで先の利用者様はインプラントを以前に当院でしていますのでそのインプラントの歯はもちろん虫歯にはなりませんがお口の中では菌がどんな人でも必ず多少なりともいて、それがだんだん増えていきますのでお口の中のインプラントのほうも含めてしっかり掃除をさしていただきます。先程の部分入れ歯もお口の外でしっかりと掃除をすることになります。

食事をしていなくても誤嚥性肺炎になる可能性はある

さらにここから皆さんによく知っておいてほしいことをお伝えします。

これは今まで私は何度となくいろいろなところでお伝えしていることなのですが、意外に専門家の方でもよく誤解されていることなのでしつこく話しています。それは、胃ろうなどをして口から食事をしていないような方でも口腔ケアはとても重要であると言うことです。すなわち口からものを食べていないので誤嚥性肺炎になるわけはないと思ってしまっているのです。残念ながらそのような事は決してありません。

お口の中で常に唾液が出ていてその唾液を飲み込んでいるわけです。その唾液は残念ながら夜寝ているときに誤嚥することが結構あるのです。すなわち肺の方へ入っていく可能性がとても高いのです。これを100%防ぐと言う事は無理です。

ですから菌の繁殖する場であるお口の中は必ず掃除をすることが必要なのです。つまり口腔ケアの事ですね。

たまに付き添いの家族の方から、えー、もうおじいちゃんお口から食べてないから歯磨きしなくていいんじゃないの?などと言われますが、そのようなことを真に受けて歯磨きを全くしないとなるとあっという間に誤嚥性肺炎になり命の危険が生じます。

お口をいつもきれいに保つことが命を大切にするということです。