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入れ歯とリハビリ

2024年6月30日

先日入れ歯を作ったばかりの患者さんが見えました。この患者さん曰く、入れ歯がなかなかうまく使えないとの事でした。
あなたは入れ歯を使ったことがあるでしょうか?入れ歯の悩みは人それぞれで様々なことがありますが、単なる比較でもなく、いろいろな要素が絡んできます
この患者様は当初来られたときにほとんど合っていないような状態で、入れ歯を無理して使っていました。その無理して使っているとは?その入れ歯、入れ歯の裏側に安定剤がたくさんつけてあるのです。しかもそれがたくさんといってもかなりちょっと通常では考えられないような量なのです。それは入れ歯の厚みよりも安定剤の厚みの方が2倍位厚いのです。おそらくあなたには想像できないような状況かもしれません。この全く合っていない入れ歯を長年にわたって無理矢理安定剤を次から次へと足しながら使っていたのです。確かに安定剤を使えば強い痛みは出ません。しかしどうしてこのようなことが起きてしまったのかと言うと、痛いから毎回足して安定剤を長く使い続けたからなのです。もし当初ほんの少し痛ければそこに安定剤を使うと言うのも1つの選択かもしれません。ですが、その使うと言う量はほんの少しです。どうしてか?それは安定剤を使い続けると、ご自身の歯茎や骨が減っていくからです。事実、この患者様は歯茎がとっても減っていったということなのです。しかもこれは1ヵ月2ヶ月と言う単位ではなく、約3年近くこのようなことをしていたために驚くほど骨歯茎が減ってしまいとても厳しい状態となっていたわけです。
しかも様々な複雑な状況があり、この患者様は足が悪いために、あまり歯科医院に行っていなかったようです。すなわち車椅子などを使って生活をしていますので、普段外に行くことがとても億劫である。また出かけるためには家族や介助者の協力を得なければ出れない。そのために安定剤を使ってずっとしのいだまま3年間もの間生活していたのです。そしてなおさらに、複雑なことに多くの場合、この方の面倒を見ていたのは娘さんでした。そしてその娘さんに入れ歯安定剤をくっつけさせると言う作業をしてもらっていたのです。本人は自分で入れ歯を入れる事は一応可能なのですが、高齢なこともありあまり器用ではないため、それを娘さんにやってもらっていたのです。どうですか?この状況が皆さん想像できますか?このようなことを特に家族にやらせるとなると、どうしても喧嘩になってしまいますよね。実際、医院に通院されている時も娘さんとよく言い合いをしていることがあります。しかし、一方的に本人が娘さんを叱っているわけではなく、困ったときには、本人が泣き出すかのような態度をとり、娘さんをコントロールしていくわけです。いわば幼稚園児位の子供が母親に対して甘えてみたり、泣いてみたり、様々な態度を取り、母親の関心を得ようとすると言う行動パターンになっているわけです。これが70代の母親と50代の娘の間で起きていると言う複雑な状況なのです。
このような状況になってしまうと、単に入れ歯が合っている合っていないということだけではなく、感情の問題が常に激しく一番表に出てきますので、ちょっと何かあるとお互いが相手のことを強く言いすぎてしまったり、また誰かを悪者にした言動が出てきてしまったりとなるわけです。そして気持ちが前向きではないですからいよいよ成果は得られません。入れ歯の場合、入れ歯と言う道具を使いこなすと言うことになりますので、入れ歯があれば食事ができると言う事ではありません。その入れ歯を日々何度も何度も使い、自分の体の筋肉や舌に慣れさしていき、食事ができるようになると言うものです。まさにリハビリなのです。
一般的にリハビリと聞くと、例えば足を悪くして歩けなくなった人がリハビリをして頑張って歩けるようになると言うようなものがあるかと思います。この場合本人はとてつもなく大変な努力をしなくてはなりません。またこれを介助する専門家は、寄り添って応援することも大切ですしただ甘やかしているだけではダメですので、時としてとても厳しい言動も相手にかけていかなければ結果は出ません。結果を出して歩けるようになることが重要ですので、単に一緒にそうだよね。大変だよね。辛いよねとずっと甘やかしていて寄り添って本当にその人のためでしょうか?そんな事はなくて、時として厳しく、やれ!と言うしかない部分もあるのです。これは性格が良いとか悪いということではなく、そういう役ということです。結果を出すためにどのような役を全うしていくか。
さて、この入れ歯の患者さん、痛いから使わなかったということでした。状況を変えながら前に進んでいくと言う事は、人間と言う生き物にとってハードルを超えなければならないので抵抗感のあるものです。すなわち今までの安定剤を使った入れ歯でいつも娘と安定剤をつけろと言って喧嘩することも大変なのですが、それを長年3年間も続けて行ったために、新しいものをいざ自分で1人でやるとなると甘える相手がいなくなってその入れ歯を使っていなかったようです。
このような状況考えるに定期的に早めに入れ歯の状態を見てもらうことがいかに大事であるかと言うことです。また、足が悪いなどの理由で通院できない場合でも訪問診療などを受けて訪問歯科の治療を受けてアドバイスをもらっていれば、このような深みにはまる事はなかったのではないかと思います。

歯がたくさん残っている高齢者

2024年4月14日

こんにちは、人生100年時代と言われています。皆さんできれば長生きしてほしいと思っていますが、健康で長生きして楽しい人生を送りたいものです。その中で歯がしっかりとたくさん残っているのか、あんまりないのかと言うのは、大きな大きな差になるんではないかと言うのは想像に難くないと思います。

口や歯の果たす役割とは何でしょうか?例えば食べること、飲み込むこと、話すことそして表情や気持ちを伝えること、などが考えられます。そうするとやはり歯がたくさん残っていれば、幸せな人生ですし、そうでなければ今言ったような事は多少程度が落ちるので、大変苦労する人生の楽しみ方となるのではないでしょうか。

さてある研究結果によると、高齢者でたくさん歯が残っていて、健康であろうと思われる人とそうでない人の2つのグループで調べてみたものがあります。そうすると、お口の中の歯がたくさん残っている高齢者の特徴として1つ大きな特徴がありました。それは大抵の場合、歯並びが良いということです。そのような方には反対咬合の人はいなかったそうです。なんと1人もいないということでした。また開口と呼ばれる、奥歯は割合咬めるのだが、前歯は隙間だらけと言うような噛み合わせの人もいないということでした。この研究結果で驚くのは1人もいなかったということです。ここから言える事は、いかに子供のうち、若いうちに並び噛み合わせを守っておくか、もしくは矯正するかということがいかに重要であるかということを物語っています。

すなわち100年、人生を送ると考えた場合に、子供のうちに歯並びを良くして自己投資しておく事は重要であると考えられます。逆にそうでなければ、高齢者になったときに、歯の本数も少なく、様々な病気にもなりやすい、栄養しっかり取りにくいなど、とても不利な人生のランナーとなっているわけです。

また高齢者になり、歯の本数が減った場合には、お口の噛む力など、様々な能力が低下していくのですが、そういった口腔機能の低下が起きた場合にそれに連動して心身機能が低下すると言う研究も報告されています。このようなことオーラルフレイルと呼んでいますが、このお口の機能が低下することにより、心身の機能がさらに低下していくことが連動していることについてもう少し話をしていきます。心身という言葉を使うわけですから、1つは心、気持ちですね。気力が落ちる。なんとなく鬱になる。夜、ぐっすり眠れない、つまらない寂しいなどです。このような状況になってしまっては残念ですよね。また身の体の方ですが、力が衰える、すなわち筋肉が弱くなる。自分の力では歩けない、付き添い、介添えが必要である。自分1人では生活が不安である。十分な行動力がないために買い物などに行けない。さらにそれで認知機能もだんだん低下していき、人とのコミュニケーションが取れなくなっていくと言うような状況が考えられます。

以上のようなことから、高齢者になって歯がしっかり残っている。もしくは歯を失ったにせよ、入れ歯やインプラントなど何らかの治療により噛み合わせ歯並びをしっかり補っているような状況がとても大事です。これらのことが自分自身の人生の幸せであり、周りの人たちに迷惑をかけないで自活して生きていく大きな要因となっています。

金具の目立たない入れ歯

2024年4月11日

こんにちは、お元気にお過ごしでしょうか?最近何人か新しく入れ歯を作る患者さんを拝見しています。その方たちの中で入れ歯の金具が見えるのが嫌なので、ノンクラスプデンチャーと言われる針金が目立たないタイプのものを希望された方がいました。

そのノンクラスプレンチャー、金属の目立たない入れ歯について話をしたいと思います。通常、部分入れ歯の場合、針金で引っ掛ける場所は金属でできていることがほとんどです。どこかの歯に針金で引っかかりを作り、入れ歯を安定させるわけです。最低でも2箇所必要です。普通は2箇所ということはあまりなくて、3箇所以上かけるべきであり、そして理想としては4箇所とかになるかと思います。

さて、この金具の引っ掛ける部分をたくさん作れば作るほど安定しやすい可能性があるわけです。ですが、金属の引っかかりが見えてしまうと嫌だという人もいるのです。特に前歯のあたりに金具をかけるようになった場合、どうしても口元に金具があることが見えてしまい、部分入れ歯を入れている人と言うふうに見られるのが嫌なのでしょう。

そのため、この金属の部分をピンク色の特殊なプラスチックで作る入れ歯があるのです。このような入れ歯のことをノンクラスプデンチャーと呼んでいます。

先程の何人かの患者さんたちは、このノンクラスプデンチャーを選ばれ、やはり歯の表側の見えるところはピンク色の目立たないものでやってほしいと言う希望がありました。

そしてここからが問題なのですが、よくよく聞いてみると、表側だけではなく、裏側にも金具が見えるのがいやで、ない方が良い、金具をできれば入れて欲しくないと言うのです。どうも金具を入れると、金具が自分の歯を痛める、栓抜きのように自分の歯をぐいぐいと痛めていき、いずれは自分の歯が抜けてしまうのではないかと言う不安があるということが聞いていてわかりました。そうすると金具を極力使わず、いやむしろ全く使わず、すべてピンク色のプラスチックで金具になる部分を作ってしまうと言うことになります。そのような入れ歯もあることにはあります。ただこの場合は強度が弱くとても心配です。精度も落ちてしまいます。

そして1人の方はどうしても金具を入れるのが嫌だということで、表側には当然金具が見えないような設計にしましたし、裏側の見えない部分も金具一切入れず、全てピンク色のプラスチックで補強構造を作ると言うタイプとしました。この入れ歯の問題点は先ほど言いましたように、精度がやや劣る、だんだんすり減りやすい、後々の補強や修理が難しくなるなどということを理解された上で、それでも心配だから金属を入れないでほしいということで進めていきました。

一方また数人の方も、このノンクラスプデンチャーを選ばれたのですが、それらの方は話し合いの結果、裏側には補強の金属を入れると言うことで理解納得していただけました。つまり、表側の目立つところ、前歯のあたりだけはピンク色のプラスチックで金具が見えないような構造とする。しかし裏側には補強構造でしっかりと金属を入れて安定させる、その方が丈夫であり、精度も高くなり格段と良くなるから。また奥歯の方にはしっかりとした金属でひっかかりを作る。

入れ歯の設計と言うものは色々とあります。これは歯科医師自身が考え、そして歯科技工所の歯科技工士と相談をして決めて、最終的な形を決めるのが良いと私は考えています。毎朝、昼、歯科技工士が何人も医院に訪れたす。打ち合わせ、確認のためです。歯の模型を持ち、話し合います。患者さんの希望も踏まえ、ある程度はそれを反映させることも良いのですが、最終的には歯科医師、歯科技工士が十分に打ち合わせた上でどのように作るのかということを決めないと良いものを作る事はなかなか難しいです。そして現状、ベストなのはやはり補強構造は一部金具を入れるべきです。入れ歯と言うものはその人一人ひとりによってどこの歯が残っているのか、どこの歯が強いのか弱いのか全く違います。ですから、そのようなことを十分に踏まえて作っていく。そして目立つことが心配な方は、一部だけピンク色のノンクラスプデンチャーの材料で作るというのが良いと思われます。

インビザラインの終了と保定

2024年3月24日

こんにちは、先日インビザラインの治療を2年ほど受けて終了になった患者様がいました。

この患者様は長きにわたって頑張っていました。マウスピースを使い終了となりました。途中あまりマウスピースができない期間もありなかなか治療が進まない時期もありましたが、最終的にはゴールしました。

インビザラインの治療の場合には、歯の表面にアタッチメントと言われる小さなプラスチックのようなものがくっつけてあります。白いプラスチックです。凹凸型のものです。この凹凸の引っかかりを用いて、マウスピースが歯をタイトに押していくわけです。ですが、終了したのでこのアタッチメントを外す段階となりました。

アタッチメントを全て削り取り、歯の表面や歯茎を今一度もう一度磨いて仕上げをします。そしてその状態を確認してもらい、最終的な終了となりました。

そして終了後は安全のため、今まで使っていたマウスピースをしばらくは入れていてもらいます。これは矯正歯科の世界では専門用語として保定と言われています。治療は終了しているのだが、安全のためにしばらくは装置を使っていてくださいということです。このプラスチックの枠の外からどこか出て行かないでねということですね。

もし治療が終了してから全く保定をしないとなるとやはり心配です。人間の体ですので、復元力がありますから、元の昔の位置に若干は戻ろうとします。これは良し悪しでして、生理的に安定する位置を求め、ほんの少し移動するのは異常ではありません。ですから最初計画を立てた理論上の理想の位置を強制治療としては目指すのですが、その最も理想の位置から、実際の人間の体は生理的に様々な動きをするので、若干はずれます。遊びがあると言うことです。例えば車のハンドルでも若干遊びがなければとても運転はしづらいと思います。

それで、若干の生理的な動きで、歯が動くのは問題ないのです。それは0.2ミリとか、それぐらいの単位のことですですが、それがもっとどんどんずれていくとなるとちょっと問題です。例えばもともと前歯がとても出ていて、それがどんどんと前のほうに戻っていったとなるとちょっと寂しいですよね。ですので、保定のマウスピースをしばらくは入れてて大丈夫か、と言うことをやるわけです。

保定は最初は24時間できる限りやってたほうがいいです。インビザラインの理論上では20時間以上1日あたり入れていると言う考え方です。20時間位という事は食事をしたり歯磨きしたり外す時間があり、それ以外の時間をほぼ入れているということですので、まぁほぼ24時間入れる気持ちでやってほしいということになるかと思います。

そしてその保定を2、3ヶ月やって問題がなければ、時間を16時間位、12時間位、6時間位とどんどん減らしていき、半年から1年ぐらいは夜寝るときの6時間から1時間位で一応念のためと言うのが大体の頃合いです

さらに1年経ってその先どうするかと言いますと、週に3回ぐらいは2、3回ぐらいはちゃんと入るかどうか一応念のため入れてみて欲しい。夜だけでもいいので。という感じになるかと思います。
そうするとじゃあその先どうしたらいいんですかとなりますが、理想としては10年とか20年とかずっといつまでも入れてたほうがいいと言うことに学会的にはなってます。その辺は自分の生活スタイルと言うものもあるでしょうから、毎晩そんな事はちょっとできないという人もいるでしょうから、昼間に2時間位時々入れるとかそういうこともあってもいいと思いますし、1週間にいっぺんだけちゃんと入るか確認して6時間ぐらい入れているなどと言う人もいます。

また逆に全く入れてないと言う方もいます。それはもう10年以上経って特に異常も感じないし、変化も感じないので、まぁこのままでも大丈夫じゃないかと思ってとりあえず使っていないということです。

またこの保定はマウスピースは消耗してだんだん壊れてきますので、時々作り直していくことが必要であり、都度費用がかかります。どれぐらいそのマウスピースは持つものなのかについて少しだけ触れますが、これはかなり個人差があります。噛み合わせが強い歯ぎしりが強ような人だと2、3ヶ月で割れてくる人もいますし、1年ぐらい全くびくともしないという人もいます。

tooth model with metal wire dental braces on blue background.

矯正治療中、針金が当たって痛い

2024年3月21日

こんにちは。先日見た患者さんで唇の裏に針金や器具が当たるようで、痛いと言う方がいました。

この方は右上の前歯がとても内側の奥のほうにずれ込んでいて、一方で、犬歯は前のほうに飛び出ていると言うような状況の人です。とてもズレが大きいので、この方は針金を用いて歯を治療しています。中学校2年生です。

一般的に、矯正治療を行う場合、インビザラインのようなマウスピースタイプのものでやる場合、とワイヤーを使って歯を並べる場合があります。成人矯正の場合はこの2つの方法に大きく道が分かれます。ズレが小さければインビザラインのような方法も1つの選択となりますし、とても良い方法となります。しかし、歯の移動量が大きい場合、もしくは噛み合わせが深い場合等は、ワイヤーを用いた場合がより確実です。

この患者さんの場合、小学生の頃から見ていたのですが、小学生の時の一期治療でさほど真面目に装置を使っていなかったために(取り外し型)、このまま2期治療で矯正矯正をやっていく場合にインビザラインのような取り外し型よりも、針金をつけて固定してしまった方が良いであろうということと、前歯の前後的なズレが大きいために、針金を選択した方がより成果が出るであろうと言うような状況の中で、針金を使っています。

今回の主訴である当たっていたいと言うのは、針金をつけて初めてから最初の3日目ぐらいに起きました。最初針金をつけるとやはりどうしても気になってしまいます。そしてつけた当日その場でどこか引っかかるところはないか?痛くないか?などとは確認するのですが、その場ではまだそれほど気にならないのです。何かあるなという事はわかるのですが、痛いほど気になると言うことや、何か唇が押されているほどでは無いのです。そして3日ほど経つと、だんだん唇が閉まってきますし、針金も微妙に動くのです。

金具がどうして動くのか?それは金具が外れるわけではなく、歯がほんの少し動くために、相対的に針金の位置も変わっていくわけです。それは0.2ミリとかごく小さな量なのですが、それでもその変化によっては本人がとても気になる時があります。

実は1ミリ以上動いても全く気にならない状況もありますし、ほんの少し0.2ミリ動いただけでも、なんか当たってる痛くなるんじゃないか?と言うようなことも起きるのです。様々です。

このたびはどうしたかといいますと、まず歯磨きの指導を行いました。歯磨きが丁寧にできているかどうかによっても、実は痛みは出にくいのです。ですから歯磨きができているのかどうか気になって、全く歯磨きをしていなかったなどとなると、多少の炎症が大きな炎症になることがあるために、歯磨きが正しくできているか。具体的には弱い力で丁寧に磨く。普通5分かかるけど、歯磨きが10分はかかるよと言うような事は改めて確認をしました。

次に針金自体を長さを調整する必要があるかのチェックです。今回の場合は、長さほとんど調整する必要はなかったので、ごく少量の微調整になりました。また針金を抑えるゴムを新しいものに交換してできる限りずれることがないようにしました。

次に犬歯あたりの金具が1番気になるようだったので、そこにプロテクトする粘土のようなものを使うことを説明しました。この粘度と言うものは、お口の中に、針金が付いているときに、カバーとして、自分で丸めてくっつけるようなものが実はあるのです。口の中に使うものですので、もし間違えて飲み込んでも問題のないものです。これを米粒1粒程度小さくつまんで金具の表面に自分でくっつけるわけです。ただ粘土をつけているだけですから、食事をしたりしゃべっている間に外れてきます。そういうものです。

ですが、物理的にカバーをしているために擦れたりしないため、炎症が取れていきます。そうすると常にこの粘度のカバーをする必要はなくて、どうしても気になるな、痛いなぁと思う時だけすればいいわけです。

多くの場合、ほとんどの患者さんはこの粘土を2.3回使ったらもう後はそこまで痛くならないから大丈夫かなと思ってわなくなることが多いです。少ないですが、ずっと使い続ける人も1部います。ずっとといってもそれは2週間位のことです。

矯正治療と後戻り

2024年3月14日

先日、21歳の男性の患者様が来られました。この方は小学生から中学生にかけて矯正治療を行っていました。その後は定期的なクリーニングでずっと通っています。

お口の中を見ると、下の前歯あたりは残念ながら少し乱れています。矯正治療が終わり、針金を外し、最初のうちは特に問題はありませんでした。矯正終了後のマウスピースもある程度使っていたようです。

しかし残念ながら少し下の前歯が乱れていました。

矯正治療というものは大抵の場合、針金をつけたりして行われるものです。そして歯を動かしていくわけです。もし針金でない場合は何枚ものマウスピースを順番にはめていき、針金の代わりに歯を押して歯を移動させるという方法もあります。

いずれにせよ、外から力を加え、針金でなどで歯を動かしていくわけですが、この動かす期間は約2年位と考えてください。どうして2年なかといいますと、歯が動くということは、歯の周りの骨の細胞が活性化し、新しく骨ができてそして安定する、そういった生物学的なプロセスを踏まえて歯が良くなっていくのですが、その時間というものは、短すぎても長すぎても良くないのです。ゆっくりと着実に動かしていき安定していく。この時間は約2年位もし短すぎれば、それはちょっと無理があるスピードなのかもしれません。

そして長すぎる場合は、いつまでもその歯を揺らしてしまうために、骨の安定感が悪くなるかもしれないのです。ですので、大体そのような目安の期間があり、いつまでもダラダラとやると言うものでもないですから、患者さんは必ず約束の日に来て、確実に予定通りに治療が進むことを心がける必要があります。これを守らなければ治療の成果はいまイチとなります。

さて、先程の患者様にいろいろ聞いてみると、矯正終わった直後は頑張って後戻り防止用のマウスピースを入れていたけれども、途中から油断して入れなくなっていて、ある時あー少し戻ったかなぁと思ったけどもまぁこれぐらいなら大丈夫かと思って油断していましたと。そしてさらにずれたときに親に注意され叱られ、急いで毎日夜入れるようにしていたと言うのです。

結果的には大きくはないけども、若干はずれ、本人曰くそこまでは気にならないので、これぐらいなら充分きれいになったと思うということでした。

どうしても人間の生活行動ですので、必ずこうしろと人から命令されたからといって、親から言われたからといって、ドクターから言われたからといって、全てが守れるものでもありません。例えば英語のテスト100点を取ると言うことを目標とし、一生懸命単語を覚えるわけですが、90点なら取れるかもしれないわけで。

常にある程度の後戻りと言うものは存在しますし、後戻りしていないとしても、加齢とともにまた様々なことが起きる可能性があるので気をつけたいものです。特に気をつけるべきは以前にも書いていますが、鼻呼吸と舌の上顎につけている位置です。

矯正治療には費用がかかる。安い矯正治療で治るとかいう事は無い。

2024年3月10日

こんにちは、先日訪れた保護者の方から費用をあまりかけないで矯正治療をしようと思っている、どうかと相談を受けました。そのお子さんは今まで一期治療で小学校低学年から小学校高学年まで治療を受けていました。そしてその先中学生になってから次の段階の2期治療を受けようかどうかと言うところで迷っていました。

そしてお母さん曰く、よその医院でもっと安く治療ができると言う話を聞いたと言うのです。その話を具体的にどのようなことかを聞いてみると、マウスピースのような枠を数万円で買って、それを自分で使ってもらうと言うものでした。そうすればだんだん良くなると言うことなのです。

私は矯正歯科は専門ですので、その話が大体どういう流れでそういうことになっているのかはなんとなく想像がつきます。また、そのような類の話を他の保護者の方からも聞いたことが何度かあったり、あるいは本人がそのようなことを患者さんが友達から聞いたと。それはちょっと危ないなと言う事はすぐにわかります。

すなわち、矯正はあまり専門でやっていない医院の場合、マウスピースのような枠だけを売っていて、実際にはその具体的な使用方法の指導等がいまいちで、あまり実際には効果が出ないと言うのがよくあるのです。まず第一に考えられることとして、マウスピースを夜だけ入れてれば治るとか、そのような簡単な事は無いわけです。

もしそれでうまくいくのであれば、矯正の勉強を我々ドクターがかなり長い時間費用をかけて習得していると言う事は全くないと言う話になってしまい大きな矛盾なのです。またマウスピースのようなものをはめる矯正治療はあるのですが、それには一緒に付随したトレーニングメニューがあり、筋肉を鍛える方法が一般的ですが、これをしっかりと指導説明することが実はかなり難しいです。これらの指導をできるようになるためのトレーニングを術者が、そもそもしっかりと受けていなければ、そのようなことを患者さんに教える事は難しいです。またこれはちょっと文章で紙に書いて渡したから、じゃあ明日からやってねと言うような簡単なものではありません。

あなたはどうせなら費用がかからず安いほうがいいと思うかもしれません。ですが、きちんとしたものにはそれなりに材料や教育のためのコストがかかっていて、それがとても安く出ていると言う事はやはり無いのです。今ネットなどで、例えばこのタブレットを1ヵ月飲めば2キロ痩せるとか、そのようなものがいっぱい出回っていますがそのようなものがほんとに果たしてうまくいくでしょうか?もしかしたら100人に1人うまくいくのかもしれませんが、大抵の場合はそれはうまくいくわけがないわけです。

しかし、このようなまやかしダイエットの方法こそがひたすらたくさん宣伝が出ています。もうこれでもかと言う位しつこい位宣伝がネット上に飛び交っています。ここまで毎度毎度宣伝を見てしまうと、もしかしたらうまくいくんじゃないかと洗脳されていくわけです。やはり人間楽して痩せたいとか費用もそんなにかからずに良くなるなら、それに飛びつきなくなってしまう。

ですが、皆さん医療と言うものはそのようなわけにはいかないので、十分に注意が必要です。矯正と言うのは塾に行って勉強するのに似ていると私は思います。1年2年いきます。宿題も出ます。やればやっただけ成果は出ます。やらなくて成果は出ません。時間は必ずかかるものです。時間がかかりだんだんと成績が上がっていくと言うものだと思います。毎日ちょっとだけやれば成績があるよ、そんな事は無いのです。塾に行けば行っただけ。必ずそこには様々なコストがかかっているはずで、それが安いということは無いです。とても安い先生とそれなりの費用の先生、どちらの塾で本当に結果が出るでしょうか。冷静に考えればわかることなのですが

入れ歯が割れる

2024年3月7日

こんにちは、先日入れ歯の割れた患者様が来られました。そしてそれを修理することになりました。これに関して少しばかり話を共有したいと思います。

入れ歯はどうして割れるのでしょうか?様々な状況が考えられると思います。例えば、とても硬いものを噛んでしまったということもあるかもしれません。あるいは洗っている最中に落としてしまい、ヒビが入った、他にはちょっと机の上に置いていたんだが、知らない間に床に落ちてしまい、踏んづけてしまったなんてこともあるかもしれません。というか踏んでしまったと言うことを正直に言ってくる患者様は結構います。

ですが、知らない間にヒビが入って割れてしまったと言うことを言われる方も結構います。このような場合よく考えられるのは、実は、噛み合わせの力がだんだん入れ歯をどうしても壊す方向に働いていると言うことが考えられます。

1日3回食事をして何度も何度も噛んでいます。そしてそれ以外にも無意識のうちに噛みしめたり、様々な力がかかります。そのようなうちにどうしてもヒビが入ってきたりするのです。

そして入れ歯が割れた場合には、歯科医院においてその場ですぐ修理できる場合もありますが、そうでない場合もあります。歯科技工所に渡たし専用の機械で作業する必要が起きる場合もあります。そして修理では不可能で直せないことも考えられます

そもそも原因として考えなければいけないのは、噛み合わせがどうなっているか、安定感はどうかなどです。噛み合わせがだんだんと変化していくことが考えられますので、他の歯がどうなっているかや、残っている歯がどのような状態で噛んでいるかなどによって、力のバランスが悪ければ、どうしても入れ歯を壊すような方向に力がかかっている可能性がありますので、もう一度全体的な治療を考えて、噛み合わせを調整していったり一部かぶせ直したり、入れ歯を作り直したりする必要があるかもしれません。

また出来の良い入れ歯ほど割れると言う説もあります。それはどうしてかといいますと、しっかり噛めるからです。しっかり噛めるためにいつも入れていて、どんどんどんどんバリバリと噛んでいくために消耗も激しくどうしても壊れてしまう、このような患者さんもたくさん見てきました。

今回の患者さんの場合は下の歯がたくさん残っていて、上は大きな入れ歯となっていて、上下のバランスが違います。下は自分の歯ですからかなり力があるのです。一方上のほうは自分の歯は1本しか残っていない状況で、どうしてもプラスチック部分には無理な力がかかってしまい、使えば使うほどヒビが入ってきてしまうと言う状況でした。この場では一旦ヒビをプラスチックで埋めて、補強の金具を入れ、修理とし、新しい入れ歯を作ることとなりました。

新しい入れ歯には費用はかかるのですが、補強構造として大きな金属のプレートを入れて作ることとなりました。金属のプレートを入れるメリットとしては、今までのプラスチックより強度が強いこと。それによって割れにくくなること。また裏側の部分に金属を入れることによってプラスチック部分を薄くできる。そしてプラスチック部分が薄いためにお口の中に快適性を付与することができる。さらには金属のプレート部分が大きいために温度や味を感じやすくなるということが考えられます。

この金属のプレートを入れた入れ歯にしてからはびくともしないような状態となりました。以前ですと3ヶ月に1回くらい、ヒビが入ったような気がするということで、いつも気にしていましたが、それ以降はそのような心配もなくなり、ずいぶんと快適に過ごされているそうです。

マウスピース矯正とワイヤー矯正の併用

2024年2月22日

マウスピース矯正にはマウスピース矯正の良いところがあります。またワイヤー矯正にはワイヤー矯正の良いところがあります。

その患者さんのお口の中に状況にもよるのですが、ワイヤーが向いている、もしくはマウスピースが向いていると言うような事はあります。そしてこの2種類のやり方、すなわちワイヤー矯正とマウスピース矯正これを両方いいとこ取りしてやると言う方法も実はあります。

それは最初ワイヤーである程度並べていき、難しいところを超えるところまではワイヤーで行きます。そして、中盤に差し掛かってからマウスピースに取り替えてしまうのです。

最後までワイヤーで行ってもいいんじゃないかと思うかもしれませんよね。けど、最後の微妙な固定はマウスピースの方が良い場合もあるのです。

今示した例は最初ワイヤーでスタートし、途中でマウスピースに交代し、マウスピースで最後まで終了していくと言う方法です。その逆も実は存在します。最初マウスピースでスタートし、途中でどうしても乗り越えられないところが残ったところだけをもう一度針金で最後上げていくと言うこと。

またもっと別なパターンもあります。マウスピースでスタートし、途中で1度ワイヤーに変わり、またそのワイヤーを外して、マウスピースに戻る。

なんだかとても複雑な話ですよね。そうなんです。人の体って予定通りではなく、みんなそれぞれバラバラで違うんです。複雑なんです。またどの道具を使ったら確実に治るとか言うものでもなく、その人の体によってやはり矯正の限界というものがあり、どこまでも歯や顎が自由に動くわけではありません。

例えて言えば、美容外科で顔をあの芸能人にそっくりにしろと言っても、そんなこと起きるわけないですよね。その人固有の個性があり、その個性を生かした中でより良い状態は持っていく、より安定した状態へ持っていく、より健康的な状態へ持っていくと言うことなのです。どこまでも好きなところへ行くと言うわけでもないです。それがその人らしさ、その人を尊重しているということだと思っています。

またどの装置が良いのかと言うのは、微妙な場合があり、実際にやってみて、途中でやっぱり変えたほうが良いとか、そういうことも起きたりします。最初から全てがわかるわけでは無いのです。患者さんからしてみたら、もしかしたらどうして途中で装置を変えるんですか?と思うかもしれません。

ドクター側からしてみれば、人間の体で一人一人違うので、全く同じ形の車を修理しているわけではありませんから、同じ方法で全部うまくいくということはあるわけがないと言う前提です。実際にその1人の人を見てみてやってみて、初めてわかるということがあります。

例えばの例で言うのですが、私は患者様に入れ歯を作ることがあります。そして1ヵ月2ヶ月とかけて入れ歯を作るわけですが、その中でなんとなくその人の顎の動きや噛み癖、特徴なんかがなんとなくわかるわけです。そして1つ目の入れ歯ができて、それで確かに大体はうまくいくのですが、半年後にもう一度新しいのを作ることになったりします。

その時には前にはこうだったから、多分こうなるんじゃないかとか、またいろんなことがわかって、もうちょっとこういう風にしといてもいいかなといろんな予測が立つわけですね。そうやって1人の患者さんに1度作ってもう一度入れ歯を作るなんて事はよくあることなんです。けど、人間だから多分そうやって作っていくのがいいんじゃないかなと私は思うんです。

もし仮に1回だけしか作らなかったとしても、やはりその作ったものを何度も調整したり様子を見たりするわけで、全く新しく作り直すわけではないけれども、問題が起きなかったとしても時々は経過を見てみたいと思うし、ドクターとして。

歯科矯正と歯をできる限り、抜かない方法

2024年2月11日

前回の話に続き、抜歯を避ける方法に関して話をしていきたいと思います。

専門用語でIPRという言葉があります。これはかなり難しい言葉で矯正をある一定以上やっている歯科医師、もしくは歯科衛生士等であれば知っている言葉です。ですが、一般の方にはちょっとわかりにくいので、もう少し噛み砕いてお伝えしていきます。歯と歯の間を0.3ミリほど削るということです。

もし歯と歯の間を0.3ミリほど削ると、0.3ミリの隙間ができるわけです。そうするとその分スペースができて重なってる歯を動かしやすくなります。ということは、歯を抜くよりもその方が合理的であると言う場合があるわけです。

ですが、0.3ミリですので、それだけでは足りない、たった0.3ミリでこんなに重なってるのに歯が治るのか?ということもありますですので、それは1カ所だけではなく、6箇所位とか10箇所位この作業を行うこともあるわけです。そうすると全体としては2から3ミリの隙間ができますので、これらを有効に使って引っかかりをひもといていけばきれいに並ぶと言う方法です。これで抜かないのであれば、とても良い方法の1つであると考えられます。

では、歯と歯の間を0.3ミリ削っても良いのか、大丈夫なのか?ということを気にされる人も出てくると思います。歯の表面には1ミリから2ミリほどのエナメル質と言う層があります。これはとても硬い層で、この層があればはとても虫歯になりにくいのです。ですので、このエナメル質のある範囲内で安全な範囲内を多少だけ削るということなのです。逆に言うと隙間を作るために歯を2ミリ削ったと言うのではちょっとだめな場合も考えられます。

だめな場合とはどういうことかと言うと、歯の神経が生きていれば、削る量は先ほど言った0.3ミリとか0.5ミリのような範囲になるかと思います。ですがもしその歯がもう既にかぶせ物がしてある、神経がないような歯であれば、1ミリ削っても問題は起きないわけです。ということは、全体の状況を考えて、どこをどれぐらい削って、隙間を作るかと言う治療計画になります。そして引っかかりを解くために合理的な場所と量を考えてこの削合を行っていくわけです。

どうでしょうか?あなたは削ると聞いて、ちょっと嫌な気もするかもしれません。ですが、どちらかの選択なのです。IPRと言うこの手法を用いるのか、前回にお話しした小臼歯を抜歯するのか。そうすると患者さんにどうしたいかって言うことを聞くのですが、大抵の場合はあまり抜きたくないから、0.3ミリほど角を丸める、IPRと言う方法を選択される場合があります。ですが、それでも小臼歯を抜歯してくださいと言う方も、実はちらほらいるのです。

どうしてそれでも小臼歯を抜歯してくださいと言う人がいるのでしょうか。それはやはりちょっとでも前に出ているのが確実に下がったほうが良いのではないかと思っているからと思われます。このようなことから人によってどのように物事を捉えているのか、感じているのかが、個人差がかなり激しいということです。ですので、担当のドクターとよく相談してどちらを選択するのかは考えていく必要があります。もちろん診断的に片方しか選べない場合もありますので、そのような場合にはそれを選択する可能性が高いです。

ちなみに、このIP Rと言う方法は最近とても増えてきている方法です。昔からあった方法なのですが。その理由として考えられるのは、マウスピース矯正の普及が1つにはあると思います。マウスピース矯正はこのIP Rと言う方法と相性が良いからです。また昔は、ワイヤー矯正は一般歯科の先生でやっている方が少なく、矯正だけを行う歯科医院で矯正を行っている場合には、一般歯科治療の一部にあたるIR Rを得意としていないためにほとんど行われていなかったと言う実情があります。