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Teeth brace in the white background, 3d rendering. Computer digital drawing.

矯正治療と舌の位置について

2023年9月10日

お口の中には舌があります。この舌なんですが、正しい位置はどこか?わかりますでしょうか。舌の正しい位置は上顎についている状態です。笑?と思われる方も結構いるかもしれません。実は下に降りて下顎のほうにいるんじゃないか、と思っている人もいますよね。実際問題、その間違った下顎のほうにいる状態の人もいっぱいいるのです。その下のほうにいるような状態のことを低位舌といいます。

さて正しい舌の位置にあるとどのようなことが良いことなのかを少し話したいと思います。

1.上顎を大きくし、きれいなカーブにする。先ほど舌は上顎についていると言いました、上顎の骨の形が綺麗な円の状態になっているのか、歪んだ状態になっているのか、これは舌が上に上手くきれいについていると上顎のカーブが綺麗な球状になっていき歯がきれいに並びます。このような状況になるために、もし子供の場合、ついていなければいつもそこにつけておきなさいと言うことを指導しています。

2.不正咬合を治す。舌が間違った位置にあり多くの場合は下顎にあり、歯と歯の間に挟まっていたり、特に奥歯に挟まれている場合が多いですが、このような場合は噛み合わせが凸凹になっていきます。奥歯も内側に倒れたりしている人が結構多いです。実は自分の歯が凸凹しているのは舌のおかしな位置にあるからだと言うことをぜひとも知っていて欲しいです

3.気道の広さを確保する。気道と言う言葉をどこかで聞いたことがあるのではないかと思います。首の中にある酸素の通り道ですね。この気道が狭くて夜寝るときに呼吸が止まってしまう人がいます。このような病気を睡眠時無呼吸症候群と言っています。この睡眠時無呼吸症候群は大変危険な病気であり、寝ているときに呼吸が何度も長く止まるとやがては死に至ることもあるのです。子供の頃から気道が狭ければこの病気になる確率はとても高いです。また近年の小児科の研究では子供の頃から無呼吸症が始まっているのではないかと言うことが疑われており、子供が睡眠時にどのような状態になっているか、どのような睡眠の質でしっかり眠れているのか、あるいは眠れていないのか、このような研究がだいぶ進んでいます。そして今、警笛が鳴らされていることとしては子供の睡眠の質をしっかり確保しないと脳が成長しない、また大人になったときに無呼吸症になりやすく危険である、と言うことです

さら舌が下に落ちていると言う状況についてもう少し説明していきたいと思います。多くの場合実は下顎のほうにいて間違った位置にいる人が多いです。

  1. 1.口がぽかんと開いている
  2. 2.舌を上顎の裏側に付けようとするとうまくつかない、そのようなことをした場合、舌が震えてくる
  3. 3.舌に歯の跡がついている
  4. 4.舌小帯が短い。舌小帯とは舌の裏側の付け根のところが下顎のほうにくっついているのですがそこのところがとても強くくっついているような状態の人のことです

あなたはどうでしょうか、多分多くの人が自分の舌に問題があるのかなどとあまり考えたことがないのではないかと思います。特に子供の舌に関しては気にしていないのかなと言う気がします。一方で大人の場合、高齢者になると舌にできものができて舌癌になるのではないかと心配している人が多いですが。

では最後にもう一度舌について話をまとめますが、舌は上顎についていて、舌全体がビタっと上顎についていると思ってください、そしてこの舌の位置は歯並びと重要な関係性があると言うことを知ってください。そして私たちは子供によく授業の1時間目2時間目3時間目と毎回舌がちゃんと上についているか自分で確認するんだよと言うことを指導しています。それぐらい重要です。

A smiling woman with beautiful teeth

子供の矯正治療と姿勢について

2023年9月7日

よく多くの保護者の方からこの子は姿勢が悪いと言うことを聞きます。歯並びも悪いしいつも顔を曲げているし、姿勢が悪いですと聞きます。

実は正しい呼吸ができていないと姿勢は悪いです。前回にも話しましたが、正しく腹式呼吸ができていれば姿勢は良いはずです。ですが腹式呼吸ではなく口を開けていたり胸や肩のあたりがよく動く胸式呼吸をしている子が多いのです。

正しい呼吸ができていないと十分な酸素が取れておらずそのために体は呼吸困難のような状態になり何とか無理して頑張るために、呼吸補助筋を使って呼吸しようとします。そのため体の骨を曲げて何とか気道のスペースを広げようとしたりするために、結果、肩の高さが左右で違ってきたり、頭が前に出たり、背骨の上が曲がったりと言うような不思議な姿勢にいつもなってしまうのです。

これが腹式呼吸ができていないと姿勢が悪くなっているよーと言うことなのです。しかし当院での筋機能療法の矯正治療を受けた子供たちは指導をしっかり守っていれば、顎や舌の位置が正しい位置になるために6ヶ月もすれば頸椎の湾曲は改善されていきます。

では腹式呼吸のポイントに関して少し話したいと思います。

  1. 1.立っていても座っていても姿勢はまっすぐ
  2. 2.3秒で吸って3秒で吐く
  3. 3.吸うときにお腹は前に出し、吐くときにへこませる
  4. 4.鼻息は聞こえず、静かな呼吸である

実際に私たちが患者さんを見ているときには、姿勢はどうか、まっすぐかどうか見ていますし、口を閉じて鼻で息をしているかを見ています、そして呼吸のスピードが早すぎると言う事は無いだろうか、呼吸が激しく強くなっていない、マイルドであるか、お腹の動きはどうか、リラックスした呼吸であり力んでいないか、呼吸とともに体が揺れていないか、などを何となくふわっと見ています。

このように腹式呼吸についてしつこく語っていますが、歯並び矯正をすると言う事は単に歯を治すと言うことではなく、そもそもの原因を多角的に治せる素晴らしい治療なのです。健康な体もっと言えば強い体を獲得できるし生理学的に美しい体に近づくと言う魅力的なものなのです。

ですのでただ単に姿勢が良いとか悪いとか、本を読むときに寝転がっているとか目が近いとかそういうことだけをアドバイスしているわけではありません。身体の健康発育に重要な腹式呼吸を改善することによって歯並びも良くなり姿勢も良くなる、一体となっていると言うことをお伝えしたいのです。そして保護者の方にとってはもしかしたら耳の痛い話ですが、保護者の方があまりにも腹式呼吸ができていない口呼吸をもろに子供の前で見せていると言うのはあまり良い影響ではないので、子供に渡しているプリントの中にそのようなことがしっかり書かれていますので、保護者の方もぜひ参考に自分の健康に留意してほしいと思っています。

ちなみに大人になってからこのようなことをトレーニングして改善していく事は実は極めて大変です。子供は、何となく想像つくと思いますが、柔軟です。一方大人は完成した体です。ですからすでについてしまった癖を大人になってから治すと言うのはとてもハードなリハビリなのです。ですがもし子供と一緒に頑張れるならそれは素晴らしいです、そして他の新たな楽しい親子関係ではないかと私は思います。

Side view picture of woman's smile with clear dental braces on teeth against blanked background

子供の矯正治療と腹式呼吸について

2023年9月3日

当院では矯正治療をする際に、そもそも歯並びが悪くなる原因を除去することを目指しています。歯並びを治すと言う事はある意味何らかの装置をつければいつかは治る可能性が高いです。ですがただ治しただけではまたいつかだんだん後戻りしていく可能性もあるわけです。では後戻りしないためにどうしたら良いかと言うと、ずっと何らかの押さえるような枠の装置を常に作り続けて費用をかけて経過を見ていくと言うことです。

ですがそのようなことをせず、原因が除去できればいいわけです。ややこしい話ですが装置をつけただけであれば、結果として曲がっているものをまっすぐにすることができるのですが、そもそもの原因は治していないので、装置を外せばまたずれてくるかもしれないのです。

この話を何度となく矯正のスタートの時点にすべての患者様にお伝えしていますが、矯正治療が終了に向かい2年ほどしてこれだけきれいになったんだ、良かったとなったときには、昔の事は忘れ油断してしまいます。私は何度も口酸っぱく、いつも口を閉じて言いなさい、鼻で呼吸してください、舌はスポットにつけていて下さい、親知らずが生えてくるときには抜いた方が良い場合があるから油断しないでね。と言っています。

さて、様々な処置、器具を使って歯並びを治していくのですが、その治療と並行して原因を除去するための指導を厳しく行っています。その一つが腹式呼吸です。現代人は残念ながら多くの人々は腹式呼吸ができていません。もしあなたが歌とかを専門にやっていたり、合唱部などでトレーニングを受けていれば、しつこいほど腹式呼吸の重要性を聞いているのではないでしょうか。人の体はそもそも鼻で呼吸するように設計図ができています。正しい体の使い方をせず口を開けて口を呼吸していると言う事はとても不健康であり、もっと言えば危険な状態と言うことです。そしてこの口呼吸をしているために歯並びが悪くなっていくのです。ここに大きな原因が存在しています。鼻呼吸の確立をまず1番に指導しています。この鼻呼吸がうまくいくためには腹式呼吸が普段できているかと言うことなのです。もしあなたが小学校1年生の教室に行って前の方から子供たちの顔を眺める機会があったらよく見てみてください。ほとんどの子供が口を開けて口で息をしています。これはとても恐ろしいことなのです。どうしてか、口で息をしていれば風邪もひきやすいしアレルギーにもなりやすいです。体が病気になりやすいです免疫力も上がらないです。いつもぽかんと口を開いていて、それでいてこの子たちに一生懸命勉強を教えても本当に成果が出るのでしょうか。このような口呼吸の状態で様々な運動がんばっても本当に強い選手になれるのでしょうか。それは皆さんもよくわかってくれると思います

ではさらに話を進め、鼻で息をすることが大事だと言うのはなんとなく気づいていたと思うのですが、正確に言うと腹式呼吸をしてくださいと私は言いました。鼻で息をしていても、腹式呼吸でない場合があります。そのような子も結構見受けます。簡単に言いますと口でいつも呼吸している子に、口を閉じて鼻で息をしなさいと言うと、胸式呼吸になります。胸のあたりや肩のあたりが上下に動いて一生懸命胸式呼吸を始めます。これでは腹式呼吸でないので長続きしないですね。そしていつしかまた口を開けると言うことになるわけです。そもそも胸式呼吸ではダメなのか?ダメなんです。それは胸式呼吸は肺の3分の1しか使っていないのです。ですので呼吸が浅いです。そうすると脳は酸素不足と判断し、呼吸が速くなりますそうすると鼻呼吸もうまくできず口呼吸になってしまいます。そして何より気道が狭くなってしまいます。そしてさらに呼吸が浅くなると言う悪循環を繰り返していきます。

ですので私たちは腹式呼吸を基礎中の基礎として子供たちに一生懸命練習させています。毎度腹式呼吸を自然体でしているのかをチェックしています。言われた時だけうまくやろうとしても普段から自然にできていなければすぐにおかしな呼吸になりばれてしまっています。

Closeup of a mouth with braces on teeth

子供の矯正治療と開始時期はいつがいい?

2023年8月31日

先日あるお母様から5歳のお子さんに関して矯正のスタート時期はいつが良いのでしょうかと言う質問がありました。これに関しては今まで私がここに何度となく書いていますが、理想は小学校1年生の4月です。このお子さんはお姉さんが小学校2年生ですが、お姉さんと一緒にスタートすることとなり小学校1年生となるまでは練習でお姉さんと一緒にやろうと言うことになりました。すなわち本格的なスタートは小学校1年生で1年間はお姉さんの横にいてちょっとだけお姉さんと一緒に練習してみようと言うような状況です。

前回に話した小学校1年生4月がスタートとして理想であると言うのは、子供のモチベーションのコントロールにおいて理想的であるからだと言う理由を伝えました。今回は別の理由に関してお伝えしていきたいと思います。

それは何かといいますと、体の成長と関係があります。矯正治療をすると言う事は、悪い習慣により顎がずれたり、歯が曲がっている、筋肉のバランスが悪い、筋肉が弱い、呼吸が間違っている、口をいつも開けている、鼻で息ができない等を是正することではあるのですが、その是正を通じて骨の歪みも一緒にできれば治していきたいわけです。

それを考えた際に、実は顔の真ん中あたりのことを中顔面と言いますが、この中顔面が出来る限り球体の形に成長を促進することがとても成功のカギです。顔の真ん中辺、中顔面が一番成長を促進できるのは、小学校1年生から3年生位なのです。この時期が成長のピークで最も成果が出やすい時期なのです。それを過ぎるとあまり今度は成長の余地がなくなりあまり形を変えるのは難しくなります。すなわちはが並ぶ元となる土台の骨の形、顎の形を出来る限り理想的な球の形にしたいのですがそれがこの時期だと言うことなのです。速すぎても遅すぎてもだめなわけでは無いのですが、最も成果が上がりやすい時期と言うことです。特に東洋人の場合、中顔面の骨の成長が弱いと言うことが近年ではよく指摘されています。

以前映画で阿部寛主演のローマのお風呂の映画がありました。この映画の中では東洋人の顔を平たい族と表現していました。顔が平べったいと言うことです。そして西洋人は横顔から見たときに前後的に長い立体の顔をしています。一方、西洋人の顔は球に近い形なのです。この平たい顔では立体の球にはあまり近くないですよね、このような状態にはならず、横顔から見たときに立体感のある球の形の顔になってほしいのです。

実はこの形に究極的に近づけたい場合にはもう生まれてまもなくからできる努力があります。母乳が終わった頃にすぐに前歯噛みを始めることです。離乳食は食べないです。よく考えてみてください。離乳食と言う商品が世の中に出回っていない昔には誰も離乳食は食べていないのです。大人が食べているものにほぼ近いものを食べていたのです。子供だから柔らかいものを食べさせないと食べられない、歯がないから噛めないのではないか、と考えがちですが、実は昔は大人と同じものを必死に1歳児が前歯2本程度もしくはその周りの土手で噛んで食べていたのです。これをひたすら行うと立体の丘に近づいていきます。

話を元に戻しますが、体の成長を考えてどの時期にスタートすると良いかと言うことでした。もしあなたのお子さんがその時期を過ぎていた場合どうすべきかと言うことに関してお話ししますが、過ぎてしまったから全くダメと言うことではありません。その中で出来る限り良い状態になることを考えます。専門家ではない皆さんから見た場合、見た目で言えば十分に治っていると思う程度まで改善はできます。ただ我々専門家から考えると土台が十分に良い形になっているか、呼吸や舌の位置が正しい位置になっているか、などのこだわりを考えた際には、やはりどうしても差があると言う仕上がりになっています。遅いと言う事は無いのですが、もし正しい知識を持っていて理想の時期にできるのであればそれを行うべきです。もし時期を過ぎていれば可及的速やかに対策を打つべきです。そして足りない部分をどのように出来る限り補うかを考えます。

また時期が遅くどうしてもズレが大きい場合には歯を抜いての矯正治療になる可能性があります。歯を抜いてやることが悪いわけではありませんが、多くの方ができれば抜かないで治るならそうしてほしいと言う希望が多いことも事実です。すなわち、きれいにしたいと言う気持ちもあるししっかり治したいと言う気持ちもあるのだが、抜くのはちょっと心配かなと言う気持ちもあるのです。人間だからいろんな気持ちがあるのが普通だと思います。その中で最も自分らしい生き方はなんだろうと言うことを検討していくことになるかと思います。

子供の矯正と子供のモチベーション

2023年8月27日

前回子供の矯正をしていく上で、矯正治療を受けているのは子供自身であり、子供自身が変わらなきゃ、と思えるように持っていきたいと言うことをお伝えしました。今回はそれをさらに深掘りしていきたいと思います。

子供自身がこれもうちょっとやってみたいなー、もっと良くなってみたいなーと言うようなモチベーションにつながるような状態にしたいわけです。
具体的には装置を決められたように毎日家に帰ってから1時間入れてね、口を閉じて鼻で息してね、

舌はスポットに付けていてね、など指導するのですが、この時に子供のモチベーションが高いのか低いのか、これは治療の成果に大きく関わってきますよね。

ここで1つ我々が指導していく上で重要なことを皆さんにお伝えしたいです。これはかなり重要なことですが多くの方が残念ながらこのことを保護者の場合は理解していません。ここは子供の運命の分かれ道と言ってもいいです。それは何かといいますと、子供の矯正治療はいつからやるべきなのか?それはきっぱりといいますと小学校1年生4月です。ほぼこの時期から始めてください。その子の人生が大きく変わるといえます。いろんな保護者の方がいますが、4歳5歳位からあるいはもっと言えば1歳2歳から出来る限り子供の健康考えて通っている方もいます。当然このような場合、当院の予防クラブのプログラムで対応していてそこで予防矯正を6歳までは行っています。そして小学校1年生から矯正をスタートしようと言う計画を事前に何度も本人にもイメージさせています。

どうしてこの時期なのか?もっと小学校6年生や中学校2年生位でも大丈夫なんじゃないか?と言う保護者の方が結構いるのですが、今回話しているモチベーションのコントロールに関しては、小学校1年生が医療者側からすればベストなのです。私たちは子供自身が自律的なモチベーションを持ってやってくれる状況を出来る限り生み出したいのです。本人が自律的なモチベーションを持ったときには最強の結果が出ます。このモチベーションのコントロール、医療者側からすれば小学校1年生がベストなんです。これは様々な心理学的な背景の中から出ている結論です。

大人の言葉が理解でき、様々なアドバイスを実際にやる際にその行動を形にできる程度の理解力がある、かつ精神年齢がそこまで発達しておらず自我が強くないために大人のアドバイスを聞き入れやすい。と言うことなのです。と言う事はこれがだんだん学年が上がり3年生4年生そして5年生6年生と思春期に近づいていくと、どんどん賢くなり大人が言うことに対してそれって本当なの?と実は心の中で思っていたりします。そうするとモチベーションのコントロールはどんどん難しくなっていくのです。

今回はモチベーションのコントロールに対しての理想的な時期と言うことで話をしました。実は他にも様々な要因があるのでそれはまた後日伝えたいと思います。

またモチベーションには2種類あり、1つはこれをやったらゲームを30分やっていいよと言うようなタイプのモチベーション、これは短期的な効果しか得られません。もう一つは自律的なモチベーションで、自分から行動できるようになるよう仕向けますこれこそが最強のモチベーションです。

そのために私たちは毎回こうしてください、と、単に指示をするだけではなく、本人と対話します。本人と相談をします。すなわちどうしたら自分ができるのか自分なりにいつだったらやれると思うか、あるいはどうしてやれなかったのか、どうしたいのかなどを根気よく引き出していきます。

Portrait of a cute little girl looking at her teeth after doing teeth surgery in a pediatric stomatology while sitting in stomatology seat.

子供の矯正治療と本人のやる気

2023年8月24日

当院ではよくお母様とお子様が歯並びの相談に来られます。これは子供に例えば、水泳を習わせたらいいんじゃないかと思って、スイミングスクールに行くわけですね。そしてスイミングスクールを見学して子供と確認しあってじゃあここでがんばってみよう、となるわけです。

そうなるとですね、矯正治療を受けているのは子供自身なのです。当たり前のことですが、保護者がどんなに手助けしても、その手助けはある程度しかできないんです。ただ勘違いして欲しくないのは保護者が全く関係ないとか手伝うことができない、協力ができないと言うことでは無いのです。保護者が子供に気をかけてあげたりプラスの言葉を投げてあげたりそのような事は極めて重要です。ですが矯正治療を受けているのは子供自身であり、その子供自身が多少は頑張らないと成果が出ないと言うことです。ごくまれにですが勘違いしている保護者の方がいます。それは歯科医院に行って矯正治療さえ受ければ何とか治るんじゃないか?装置さえ入れていればだんだん治っていくんじゃないか?そのように単純に思っている方がいます。

これは違う例で言うと、ピアノ教室に通っていて、通いさえすればだんだん上手くなっていく、2年も経てばそこそこ弾けるようになる。と思っているわけです。あるいは違う例で言うと、学習塾に行って子供を送り届けさえすれば子供は勉強ができるようになり成績が上がる。果たしてそうでしょうか?そうですよね皆さんよくわかってらっしゃいますよね、決してそんな事はなくて、それなりに家でピアノの練習をする必要がありますし、家で宿題をやったり努力をして初めて十分な成果が出てくるわけです。そしてその成果は個人個人違って全員同じ結果になるわけがないです。

話を戻しますが矯正治療を受けているのは子供自身であり、私たちは子供にも一生懸命アプローチしていくわけです。すなわち歯科医院に来てその場で何とかなるとは思っていないわけです。家でやるべき努力、家でやってほしいことを本人に伝えていき、子供ですのでただ単にやれと言えば良いと言うことではなく、その人の成長度合いに合わせ始動、アドバイスをしています。

特に気持ちの上で、子供自身が変わらなきゃ、と思うようにすることを考えています。子供が単に親がやれと言ったからやるわけでもないですし、ドクターがこうしなさいと言ったから全くその通りにやると言うわけでもないです。人間だからそうですよね。

そのために私たちは、子供が自ら行動しやすいようにいくつかの点を気をつけて付き合っています。

  1. 1.ポジティブな声掛け
  2. 2.楽しいと思わせる
  3. 3.習慣化の手助けをする
  4. 4.自宅でマネージメントできる目標設定をする

このようなことを気にかけモチベーションにつながるように考えています。

little girl at a Children's dentistry for healthy teeth and beautiful smile

矯正治療と歯並びの原因について

2023年8月20日

歯並びが悪いことを専門用語では不正咬合といいます。不正咬合に関して様々な研究がありますが、5歳から17歳を対象に調査した場合に88%が不正咬合であると言う結果があります。すなわち10人中9人は不正咬合、歯並びが悪いと言うことです。皆さんこれをどう思いますか?一方でアフリカなどで未開拓地の住民を調査したデータなどを見ると不正咬合の人はかなり少ないと言う結果が出ています。ここから読み取れる事は何かといいますと、文明生活が不正咬合を生み出しているのではないかと言うことです。

文化人類学的にもこのような調査は世界的に行われていますが、先進国にこそ不正咬合が多いと言うことがわかっています。前回にもお伝えしましたが、われわれは現在生活の中でとても柔らかい食事をしています。その結果、顎の筋肉や骨が十分に成長せず歯はうまく並ばないのです。
このような顎の筋肉や骨が十分に成長していないことを、専門的な言葉で、筋機能障害といいます。筋機能障害と言うとかなりなんだか難しい言葉に聞こえてきますよね。筋肉を機能として十分に使っていないと言うことです。すなわち昔はもっと硬いものを一生懸命必死に何回も何回も噛んで食べていたんだけども、最近では柔らかくてしかも飲んだりすれば十分に栄養がしっかり取れたりする、そんな便利な生活を送っているために必死のトレーニングを放棄してしまっているわけです。

そのために筋機能療法を行う必要があると言われています。筋機能療法とは、筋機能のエクセサイズを行い強化することです。ごく簡単に言ってしまえばしっかり噛むと言うことです。しかし歯科医療で歯並びを治すと言う意味においてはそのような簡単なことでは治りません、と言うのは筋肉と言うのは噛むための筋肉だけではなく他にもいろんな筋肉があるのです。それは例えば唇の中にも筋肉はあります。例えば舌も筋肉です。舌をどのように使っているかとても重要な関係があります。歯並びと舌って関係あるのか?と思われる方もいるかもしれませんが、とんでもありません。かなり関係があります。

さて当院ではこの筋機能療法である口の周りの筋肉や呼吸等を正常な状態にするためのエクセサイズを矯正する場合には必ずセットで指導しています。これには重要な根拠があります、それはある論文によると矯正治療を行った際に、矯正器具のみをつけていた治療では84%に何らかの後戻りが起こると言う報告があるのです。一方で矯正装置とこのエクセサイズを両方行った場合には、36%の後戻りがあると書かれています。

ここからわかることは装置をつけて歯を動かす事は確かに重要なのですが、それ以上に顔の周りの筋肉のエクセサイズをしっかりとマスターしていくということがかなり重要だと言うことです。むしろそれを全くやらないとなるととても心配な状況になっていますよと言うことです。
これはちょっと違う例で表現しますと、このようなことになるかと思います。野球のクラブチームに入って上手くなりたいからと言うことでとても性能の良いバットとグローブを手に入れていつも練習していること。ところが性能の良いバットとグローブを手に入れただけで、それを試合ごとに使うだけで果たして良い成績で活躍できるでしょうか?そうでは無いですよね。確かに良い性能のバットやグローブがあった方が良いのですが、当然それを用いてしっかりとした練習や筋トレなどや走り込みなどをしていない選手が良い成績が残せるわけがありません。

さてまとめに入りますが今回お伝えしたいこととしましては、歯並びが悪くなる原因は現代生活にあり、それは小児期にあり、現代の生活を送っているからと言うことです。そして具体的には顎の筋肉などが十分に発達していないと言うことです。そして親がいびきをかいて寝ていれば子供もそれを真似して間違った生活習慣をしてしまう可能性があると言うことです。そしてそのような悪い歯並びを改善していくためには、単に装置を入れれば良いと言うことではなく、正しい体の使い方、筋肉のトレーニングをエクセサイズをもう一度学び直す必要があります。それこそが最も矯正治療の重要なポイントであると言うことです。

よく患者様はどのような装置で治療するのか、その装置が痛いのか痛くないのかと言うことを一生懸命聞かれますが、それで良し悪しを判断するというのはとてもバランスが危ないです。

This cute girl is getting ready for her regular dental appointment at the dentist's office checkup.pediatric medical care concept.

子供の矯正治療と費用

2023年7月23日

先日患者様から矯正の費用に関しての質問がありました。

子供の矯正費用に関して小学校1年生から3年生位の2年間で行う筋肉のトレーニングを用いたマイオブレース矯正、筋機能療法、シリコンのゴムのようなものを用いて筋肉の姿勢のバランスを直す方法のことです。この矯正方法は器具を使ってぐいぐいと歯を押すというよりは、自らの本来の持っている筋肉の動き、舌の筋肉の動きなどを正常化させて正しい生理的な自然な本来DNAの設計図通りの位置に歯が生え上がっていき動くようにとする、とても画期的な治療法で、小学校低学年のある一時期の成長期を利用すると成功すると言われているものです。

当院でもしこの治療を2年間行うと約400,000円弱の費用がかかります。このマイオブレースと言う筋機能療法は東京などの関東では特によく行われている治療法ですが、この正確な治療プログラムに基づいた指導療法を行っている医院はまだ少ないです。またこの治療を行うと費用としては当院よりも多少安いとこもあるかもしれませんが大抵の場合はこれよりもより総額的には高い場合が多いかと思われます。

ところがこの患者さんはこのマイオブレース・アクティビティーズの装置だけが売っている医院を近くで見つけそれが80,000円で売っているそうなのですが、それを買うそうなのです。子供のために。トレーニング法をこちらではかなり包み隠さず聞かれたら教えたりしているのでそれを子供に伝えて自分が指導すればうまくいくのではないかと言うことなのです。ちなみにこの方はご自身が針金を使って矯正をしていますが、当院では針金やインビザラインなどのマウスピース矯正を受けたとしてもすべての患者さんに治療終了後にいかに長持ちするかと言う重要な観点の上から筋機能療法、マイオブレース矯正の指導トレーニングをかなりの部分、サービスとして教えています。

先程の約2年間で行われる小学校低学年の矯正治療は約400,000円ほどと言いましたが相場でも大体それぐらいに近い額で、その治療費のほとんどはトレーニングの2年間のプログラムの費用と言っても過言ではなく、装置の費用と言うよりは指導料の部分です。ちなみに例えば塾で言えば塾の教科書代、テキスト代等が仮に2万円だとすると実際の塾に1年間行けば600,000円かかるとしまして、そのような費用負担になるのではないかと思いますが、テキストだけを買って母親が教えるから残りの600,000円を払わないでも成果が出るのではないだろうかと言う話になるかと思います。残念ながらこれは難しいと思います。というのも他院で治療している矯正中の患者さんがよく途中から医院を変わりたいと相談に来ることがあるのです。

そうすると、残念ながら装置を買っていくら、指導料は別途1回5000円と10,000円とかと言う請求を受けているようなのですが1回や2回位指導を受けたから、成果が出ると言うようなものではないのです。やはり成長期2年間と言う期間を経過を見ながらやっていくことがプログラム全体としてもう仕組みとなっているので、その部分だけを買ったりしてなんとかすると言う事は不可能なわけです。ですが入り口部分としての安さに魅力を感じてしまい、そのような行動をとっている保護者の方がたまに見受けられるようです。非常に残念でなりません。そして結局当院に再度受診をすることになるわけですが、そうするとやはりどうしてもプログラムとしての費用なので全体の費用がかかってしまいます。

よくよく考えて欲しいのですが、もし保護者の方が子供を塾に通わせる場合あるいはスポーツを本格的にやらせようと思っている場合、より安い塾に入れるでしょうか?それよりもその子に成果の出るところを選んだ方が良いのではないでしょうか。高ければ良いと言うわけでは無いですが、安いと言う事はかなり私は危険ではないかと思っています。なぜなら安いと言う事はそのもの自体をその金額で渡すことができるのですが、それ以上のサービス内容、使い方、今後やらなければいけないこと、困ったときにどうしたらいいかなどフォローは何もないと言うことです。これが日本の矯正と、世界の医療における差としての非常に重篤な問題点です。

診断や情報、指導にこそとても価値があり、かつそのことをするために実は下準備や研究教育などにとても費用がそもそもかかっているわけです。そういった形にはなっていない部分に対しての費用を払おうとしない文化が日本にはあるかと思います。一方矯正の先進国アメリカなどではむしろ診断であるとかアドバイスに対してとても高い費用がかかり、全体の総費用の分配の中でそちらに当てられています。スポーツで言えばコーチをしてアドバイスする人間に高いチャージを支払っている有名選手はいっぱいいます。

診査、診断、アドバイスにこそ、価値があります。

Beautiful smile and white teeth of a young woman.

矯正治療とマウスピース矯正

2023年6月29日

先日親子で矯正治療を受けたいと相談された方がいました。

娘さんはワイヤーをつけるのはどうしても嫌で自分は絶対にマウスピースがいいとおっしゃられていました。一方お母さんのほうは食事の準備などいろいろあるし取り外しよりも針金をつけていたほうが楽だと思うから私はそっちがいいと。

インビザライン矯正(マウスピース矯正)とは

インビザライン矯正と言うものがあります、あなたは聞いたことがあるでしょうか?

マウスピース矯正の1種で半透明色のマウスピースをはめて歯を動かしていく方法です。マウスピース矯正は様々なタイプがあり、そのうちの1つがインビザラインと言う名前です。

この矯正方法は今までの針金を用いる矯正方法と違い、基本的にはお口の中に針金をつけたりをしないで歯を移動させていきます。そうなると今まで針金をつけることがとても嫌だなぁと思ったり、針金が付いていて歯磨きがとても難しいと感じたり、あるいは歯磨きが不十分で金具や矯正器具のキワか何かが虫歯になってしまったり、歯周病になったりなど、そのような点を考えると、有利かもしれません。

そして何よりこのマウスピース矯正を選ばれる方の最大のポイントは半透明色でそれをはめてみても一見他人から見てあまり目立たない、すなわち見た目です。中学生など針金をつけていることを他人に見られたくない、自分はそんなにを気にしていないがもしかしたら人から見てどう思われるのかとても不安である、どうしても気になってしまう、など様々な心理的な理由で針金をつけずにできればマウスピースでできるならそうしたいと言う人が結構いたりするものです。

インビザライン矯正(マウスピース矯正)のデメリット

このマウスピース矯正の最大の特徴の1つは目立たないと言う事なのですが、もちろん弱点もあります。少しそれに触れたいと思います。

今から言う事はとても当たり前のことなのですが、その当たり前のことが実際想像がつかない方が結構いたりするので、よくそれを充分理解した上でマウスピース矯正を選ぶべきです。

毎日20時間以上、装着しなければならない

マウスピース矯正はマウスピースをはめていなければ歯は動きません。マウスピースは1日24時間のうち20時間以上は必ずはめている事ではじめて歯が動くとされるという矯正方法です。1日のうちほとんどでマウスピースをはめていると言うことです。仕事があれば会社に行ってもはめている、学校に行くのであれば学校でもずっとはめている。

逆にどんな時に外して良いのか、それは歯磨きをする時とご飯を食べる時です。そうすると1日のうちに歯磨きの時間とご飯の時間がどれぐらいあるかと言うことになりますが多分通常の生活を送っているのであればそれはせいぜい2時間の範囲内ではないでしょうか。そうすると24時間のうち22時間はマウスピースをはめていられるはずです。

そう考えると必ず20時間以上はめている事はできそうなのですが、それでも人間ですので、なんとなく外していたとか、油断してはめるのを忘れていたとかいろんなことが起きるわけです。そうすると歯は予定通りには動かなくてイマイチの結果になってしまいます。

細長い小さいスティックを1日5分程度噛む必要がある

マウスピースを馴染ませるために細長い小さいスティックを噛む、時間にして1日5分程度なのですが、毎日繰り返すと言う時間があります。これは夜とかに家で5分ほどそのスティックを噛んでもらいマウスピースを十分に馴染ませることを繰り返し行っていきます。

もしこれをやっていないとマウスピースのはまりがいまいちで、なんとなくずれていき、1ヵ月2ヶ月と経てばやがて大きなズレになっていくわけです。そうすると予定通りには動かず残念な結果になってしまいます。

このスティックを噛むと言う作業はそんなに難しいことでは無いのですが、逆に簡単だからこそサボってしまってはとても残念な結果になるのです。毎日5分、これを仮にまとめて1ヵ月分をまとめてある日24時間ずっと噛んでたよという日が1日あったとしても、それでは全く意味がありません。毎日コツコツと続ける事が大事なんです。

繰り返しいます、とても簡単なことです、誰でもできるでしょう。やれと言われれば、ほとんど誰でもできるのですが、簡単だからこそついつい「まぁいいか」と思って明日にまた伸ばし明日に伸ばし、そしてついに1週間やっていなかった、1週間も経つと0.2ミリほどマウスピースの入りが悪くなっていてちょっとずれているかもしれない、どうしようということがやがては大きな誤算になっていきます。

まとめ

このマウスピース矯正は大人の方が自分でお金を払って受ける場合には割合真面目に入れていることが多いですが、子供の場合は親にやれと言われてやっている子もいるので、そうなると成果がいまいちな場合もあったりもします。また少数ですが大人でも真面目に入れてなくてなんとなくで終わってしまったと言う人もいます。

矯正治療はアメリカやヨーロッパなどの製品や技術を利用していることが多く、とてもそもそもが高額なシステムです。ですので必ず自分のためにしっかりやるんだと言うことを充分決意の上受けることをお勧めします。

Little kid boy holding professional orthodontic denture with metal braces and removable invisible aligner. Comparation of two dental straighten treatments

矯正治療とお口の周りの筋肉

2023年6月25日

先日、小学校2年生のお母さんと矯正治療に関してお話をしていました。

よく口を開けているから口を閉じて鼻で息をするようにと言うことをお母さんと本人によく注意を促しました。そうするとお母さんは、「そうですよねいつも口開けてるからよく注意してるんですけどやっぱりそれって良くないですよね。」とおっしゃっていました。

なぜ矯正治療をするのか

矯正治療と言うと一般的には歯並びをきれいにしたい。と言うことがまずよく挙げられるのではないでしょうか?あるいは子供の場合で言えば保護者自身が子供の頃矯正をしなくて自分は歯並びが悪かったので、せめて子供はきれいにしてあげたい、などとよく聞きます。またさらに歯並びが悪いと健康には良くないんじゃないかとよく勉強されている保護者の方は言われます。

そうですね、まさに健康とは大きな関係があります。さらにはスポーツで差が出るんじゃないか、将来就職したりする時、社会に出るときに良くないんじゃないか、などと言う意見も聞いたりします。

今世界的に矯正の学会では歯並びをきれいにするると言う価値観から、お口の歯及びまわりの筋肉のバランス、機能を良くすると言う価値観、考え方にシフトしつつあります。こう言うとなんだか難しく聞こえてきますよね。

もうちょっと噛み砕いて言うとですね、確かに歯並びはきれいに越した事はないです。歯そのものがきれいなバランスのほうがいいと思いますよね。医学的にやっていることなので、ただ単に綺麗であればあるほど良いとか、流行の美しさであれば良いと言うような簡単な問題なわけでもなく、健康のために何が本当に必要かと言うことも当然あるわけです。

そうすると実は先に述べた、口ではなく鼻で呼吸しているかと言うことがとても重要であると言うことがわかってきています。そのことにもっとフォーカスして歯科矯正治療が行われるべきであるということが言われているのです。

最近のトレンドでは歯の位置を完璧にすることがゴールではない

すなわち歯の位置の完璧さをどこまでもゴールとして求めてはいかないと言うのが、最近のトレンドなのです。もし歯の位置をいつまでもキープしたいと言うことだけに着目した矯正治療になった場合には一生涯においてその良い場所を維持するための固定用の装置としてマウスピースを常にはめる、もしくは裏側に1部針金等を貼り付けたボンディングタイプの固定装置が必要となるでしょう。このような器具に頼っていつまでもずれて行かないように強固に固定していこうと言う補助器具が必要となります。

ですがこの固定器具がどうして必要なのか、もしくはどういう場合に必要ではないのか、と言うことになってきます。

それは口の周りの筋肉のバランスが良ければ必ずしも固定は必要がないと言うことなのです。矯正治療の動的期間すなわち歯を動かしたり顎が成長して大きくなったりあるいは曲がった顎を治したりなど、そのような動的な期間を経て矯正の動きがほぼこれで良いであろうと終わったときに、次にそれをずっと安定して長くキープするためには今までは保定装置を必ず入れると言う考え方でした。

確かにこの固定装置はとても良い役割を果たすのですが、それ以上に口の周りの筋肉の力が実は大きな影響緑地があると言うことがわかってきています。口を開けて鼻で息をしていなければ固定装置を使っていても歯並び噛み合わせはずれていくということがわかってきたのです。ですから1番にやらなければいけないのは口の周りの正しい筋肉のバランスを確保することなのです。

具体的に述べると、普段唇は閉じていて鼻で呼吸をしている、このような状態がほとんどの時間を占めている。舌の位置が正しい位置にあるか、舌の位置は実は上顎の裏側、口蓋に持ち上がってくっついているというのが正しい位置です、かつそれは生理的に安定した体の自然な位置です。

次に唾を飲み込んだりするような事は1日に何回も起きるのですが、その時に顔の周りの筋肉が余計に動いていない、正確にはもうほぼ動いていないそのような正しい筋肉バランスになっているか、です。

どうでしょうか?そんなこと言われると、えー、自分ではできてるわけないと思うかもしれませんよね。はいそうなんです、今言ったようなことをむしろしっかりとトレーニング指導することが矯正治療なのです。

最初の件に話したお母さんとの会話、口を閉じて鼻で息をしなさい、それを医学的に行ってフォローしていけるかどうかが矯正治療の本質です。