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歯がたくさん残っている高齢者

2024年4月14日

こんにちは、人生100年時代と言われています。皆さんできれば長生きしてほしいと思っていますが、健康で長生きして楽しい人生を送りたいものです。その中で歯がしっかりとたくさん残っているのか、あんまりないのかと言うのは、大きな大きな差になるんではないかと言うのは想像に難くないと思います。

口や歯の果たす役割とは何でしょうか?例えば食べること、飲み込むこと、話すことそして表情や気持ちを伝えること、などが考えられます。そうするとやはり歯がたくさん残っていれば、幸せな人生ですし、そうでなければ今言ったような事は多少程度が落ちるので、大変苦労する人生の楽しみ方となるのではないでしょうか。

さてある研究結果によると、高齢者でたくさん歯が残っていて、健康であろうと思われる人とそうでない人の2つのグループで調べてみたものがあります。そうすると、お口の中の歯がたくさん残っている高齢者の特徴として1つ大きな特徴がありました。それは大抵の場合、歯並びが良いということです。そのような方には反対咬合の人はいなかったそうです。なんと1人もいないということでした。また開口と呼ばれる、奥歯は割合咬めるのだが、前歯は隙間だらけと言うような噛み合わせの人もいないということでした。この研究結果で驚くのは1人もいなかったということです。ここから言える事は、いかに子供のうち、若いうちに並び噛み合わせを守っておくか、もしくは矯正するかということがいかに重要であるかということを物語っています。

すなわち100年、人生を送ると考えた場合に、子供のうちに歯並びを良くして自己投資しておく事は重要であると考えられます。逆にそうでなければ、高齢者になったときに、歯の本数も少なく、様々な病気にもなりやすい、栄養しっかり取りにくいなど、とても不利な人生のランナーとなっているわけです。

また高齢者になり、歯の本数が減った場合には、お口の噛む力など、様々な能力が低下していくのですが、そういった口腔機能の低下が起きた場合にそれに連動して心身機能が低下すると言う研究も報告されています。このようなことオーラルフレイルと呼んでいますが、このお口の機能が低下することにより、心身の機能がさらに低下していくことが連動していることについてもう少し話をしていきます。心身という言葉を使うわけですから、1つは心、気持ちですね。気力が落ちる。なんとなく鬱になる。夜、ぐっすり眠れない、つまらない寂しいなどです。このような状況になってしまっては残念ですよね。また身の体の方ですが、力が衰える、すなわち筋肉が弱くなる。自分の力では歩けない、付き添い、介添えが必要である。自分1人では生活が不安である。十分な行動力がないために買い物などに行けない。さらにそれで認知機能もだんだん低下していき、人とのコミュニケーションが取れなくなっていくと言うような状況が考えられます。

以上のようなことから、高齢者になって歯がしっかり残っている。もしくは歯を失ったにせよ、入れ歯やインプラントなど何らかの治療により噛み合わせ歯並びをしっかり補っているような状況がとても大事です。これらのことが自分自身の人生の幸せであり、周りの人たちに迷惑をかけないで自活して生きていく大きな要因となっています。

金具の目立たない入れ歯

2024年4月11日

こんにちは、お元気にお過ごしでしょうか?最近何人か新しく入れ歯を作る患者さんを拝見しています。その方たちの中で入れ歯の金具が見えるのが嫌なので、ノンクラスプデンチャーと言われる針金が目立たないタイプのものを希望された方がいました。

そのノンクラスプレンチャー、金属の目立たない入れ歯について話をしたいと思います。通常、部分入れ歯の場合、針金で引っ掛ける場所は金属でできていることがほとんどです。どこかの歯に針金で引っかかりを作り、入れ歯を安定させるわけです。最低でも2箇所必要です。普通は2箇所ということはあまりなくて、3箇所以上かけるべきであり、そして理想としては4箇所とかになるかと思います。

さて、この金具の引っ掛ける部分をたくさん作れば作るほど安定しやすい可能性があるわけです。ですが、金属の引っかかりが見えてしまうと嫌だという人もいるのです。特に前歯のあたりに金具をかけるようになった場合、どうしても口元に金具があることが見えてしまい、部分入れ歯を入れている人と言うふうに見られるのが嫌なのでしょう。

そのため、この金属の部分をピンク色の特殊なプラスチックで作る入れ歯があるのです。このような入れ歯のことをノンクラスプデンチャーと呼んでいます。

先程の何人かの患者さんたちは、このノンクラスプデンチャーを選ばれ、やはり歯の表側の見えるところはピンク色の目立たないものでやってほしいと言う希望がありました。

そしてここからが問題なのですが、よくよく聞いてみると、表側だけではなく、裏側にも金具が見えるのがいやで、ない方が良い、金具をできれば入れて欲しくないと言うのです。どうも金具を入れると、金具が自分の歯を痛める、栓抜きのように自分の歯をぐいぐいと痛めていき、いずれは自分の歯が抜けてしまうのではないかと言う不安があるということが聞いていてわかりました。そうすると金具を極力使わず、いやむしろ全く使わず、すべてピンク色のプラスチックで金具になる部分を作ってしまうと言うことになります。そのような入れ歯もあることにはあります。ただこの場合は強度が弱くとても心配です。精度も落ちてしまいます。

そして1人の方はどうしても金具を入れるのが嫌だということで、表側には当然金具が見えないような設計にしましたし、裏側の見えない部分も金具一切入れず、全てピンク色のプラスチックで補強構造を作ると言うタイプとしました。この入れ歯の問題点は先ほど言いましたように、精度がやや劣る、だんだんすり減りやすい、後々の補強や修理が難しくなるなどということを理解された上で、それでも心配だから金属を入れないでほしいということで進めていきました。

一方また数人の方も、このノンクラスプデンチャーを選ばれたのですが、それらの方は話し合いの結果、裏側には補強の金属を入れると言うことで理解納得していただけました。つまり、表側の目立つところ、前歯のあたりだけはピンク色のプラスチックで金具が見えないような構造とする。しかし裏側には補強構造でしっかりと金属を入れて安定させる、その方が丈夫であり、精度も高くなり格段と良くなるから。また奥歯の方にはしっかりとした金属でひっかかりを作る。

入れ歯の設計と言うものは色々とあります。これは歯科医師自身が考え、そして歯科技工所の歯科技工士と相談をして決めて、最終的な形を決めるのが良いと私は考えています。毎朝、昼、歯科技工士が何人も医院に訪れたす。打ち合わせ、確認のためです。歯の模型を持ち、話し合います。患者さんの希望も踏まえ、ある程度はそれを反映させることも良いのですが、最終的には歯科医師、歯科技工士が十分に打ち合わせた上でどのように作るのかということを決めないと良いものを作る事はなかなか難しいです。そして現状、ベストなのはやはり補強構造は一部金具を入れるべきです。入れ歯と言うものはその人一人ひとりによってどこの歯が残っているのか、どこの歯が強いのか弱いのか全く違います。ですから、そのようなことを十分に踏まえて作っていく。そして目立つことが心配な方は、一部だけピンク色のノンクラスプデンチャーの材料で作るというのが良いと思われます。

入れ歯が割れる

2024年3月7日

こんにちは、先日入れ歯の割れた患者様が来られました。そしてそれを修理することになりました。これに関して少しばかり話を共有したいと思います。

入れ歯はどうして割れるのでしょうか?様々な状況が考えられると思います。例えば、とても硬いものを噛んでしまったということもあるかもしれません。あるいは洗っている最中に落としてしまい、ヒビが入った、他にはちょっと机の上に置いていたんだが、知らない間に床に落ちてしまい、踏んづけてしまったなんてこともあるかもしれません。というか踏んでしまったと言うことを正直に言ってくる患者様は結構います。

ですが、知らない間にヒビが入って割れてしまったと言うことを言われる方も結構います。このような場合よく考えられるのは、実は、噛み合わせの力がだんだん入れ歯をどうしても壊す方向に働いていると言うことが考えられます。

1日3回食事をして何度も何度も噛んでいます。そしてそれ以外にも無意識のうちに噛みしめたり、様々な力がかかります。そのようなうちにどうしてもヒビが入ってきたりするのです。

そして入れ歯が割れた場合には、歯科医院においてその場ですぐ修理できる場合もありますが、そうでない場合もあります。歯科技工所に渡たし専用の機械で作業する必要が起きる場合もあります。そして修理では不可能で直せないことも考えられます

そもそも原因として考えなければいけないのは、噛み合わせがどうなっているか、安定感はどうかなどです。噛み合わせがだんだんと変化していくことが考えられますので、他の歯がどうなっているかや、残っている歯がどのような状態で噛んでいるかなどによって、力のバランスが悪ければ、どうしても入れ歯を壊すような方向に力がかかっている可能性がありますので、もう一度全体的な治療を考えて、噛み合わせを調整していったり一部かぶせ直したり、入れ歯を作り直したりする必要があるかもしれません。

また出来の良い入れ歯ほど割れると言う説もあります。それはどうしてかといいますと、しっかり噛めるからです。しっかり噛めるためにいつも入れていて、どんどんどんどんバリバリと噛んでいくために消耗も激しくどうしても壊れてしまう、このような患者さんもたくさん見てきました。

今回の患者さんの場合は下の歯がたくさん残っていて、上は大きな入れ歯となっていて、上下のバランスが違います。下は自分の歯ですからかなり力があるのです。一方上のほうは自分の歯は1本しか残っていない状況で、どうしてもプラスチック部分には無理な力がかかってしまい、使えば使うほどヒビが入ってきてしまうと言う状況でした。この場では一旦ヒビをプラスチックで埋めて、補強の金具を入れ、修理とし、新しい入れ歯を作ることとなりました。

新しい入れ歯には費用はかかるのですが、補強構造として大きな金属のプレートを入れて作ることとなりました。金属のプレートを入れるメリットとしては、今までのプラスチックより強度が強いこと。それによって割れにくくなること。また裏側の部分に金属を入れることによってプラスチック部分を薄くできる。そしてプラスチック部分が薄いためにお口の中に快適性を付与することができる。さらには金属のプレート部分が大きいために温度や味を感じやすくなるということが考えられます。

この金属のプレートを入れた入れ歯にしてからはびくともしないような状態となりました。以前ですと3ヶ月に1回くらい、ヒビが入ったような気がするということで、いつも気にしていましたが、それ以降はそのような心配もなくなり、ずいぶんと快適に過ごされているそうです。