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マウスピース矯正とワイヤー矯正の併用

2024年2月22日

マウスピース矯正にはマウスピース矯正の良いところがあります。またワイヤー矯正にはワイヤー矯正の良いところがあります。

その患者さんのお口の中に状況にもよるのですが、ワイヤーが向いている、もしくはマウスピースが向いていると言うような事はあります。そしてこの2種類のやり方、すなわちワイヤー矯正とマウスピース矯正これを両方いいとこ取りしてやると言う方法も実はあります。

それは最初ワイヤーである程度並べていき、難しいところを超えるところまではワイヤーで行きます。そして、中盤に差し掛かってからマウスピースに取り替えてしまうのです。

最後までワイヤーで行ってもいいんじゃないかと思うかもしれませんよね。けど、最後の微妙な固定はマウスピースの方が良い場合もあるのです。

今示した例は最初ワイヤーでスタートし、途中でマウスピースに交代し、マウスピースで最後まで終了していくと言う方法です。その逆も実は存在します。最初マウスピースでスタートし、途中でどうしても乗り越えられないところが残ったところだけをもう一度針金で最後上げていくと言うこと。

またもっと別なパターンもあります。マウスピースでスタートし、途中で1度ワイヤーに変わり、またそのワイヤーを外して、マウスピースに戻る。

なんだかとても複雑な話ですよね。そうなんです。人の体って予定通りではなく、みんなそれぞれバラバラで違うんです。複雑なんです。またどの道具を使ったら確実に治るとか言うものでもなく、その人の体によってやはり矯正の限界というものがあり、どこまでも歯や顎が自由に動くわけではありません。

例えて言えば、美容外科で顔をあの芸能人にそっくりにしろと言っても、そんなこと起きるわけないですよね。その人固有の個性があり、その個性を生かした中でより良い状態は持っていく、より安定した状態へ持っていく、より健康的な状態へ持っていくと言うことなのです。どこまでも好きなところへ行くと言うわけでもないです。それがその人らしさ、その人を尊重しているということだと思っています。

またどの装置が良いのかと言うのは、微妙な場合があり、実際にやってみて、途中でやっぱり変えたほうが良いとか、そういうことも起きたりします。最初から全てがわかるわけでは無いのです。患者さんからしてみたら、もしかしたらどうして途中で装置を変えるんですか?と思うかもしれません。

ドクター側からしてみれば、人間の体で一人一人違うので、全く同じ形の車を修理しているわけではありませんから、同じ方法で全部うまくいくということはあるわけがないと言う前提です。実際にその1人の人を見てみてやってみて、初めてわかるということがあります。

例えばの例で言うのですが、私は患者様に入れ歯を作ることがあります。そして1ヵ月2ヶ月とかけて入れ歯を作るわけですが、その中でなんとなくその人の顎の動きや噛み癖、特徴なんかがなんとなくわかるわけです。そして1つ目の入れ歯ができて、それで確かに大体はうまくいくのですが、半年後にもう一度新しいのを作ることになったりします。

その時には前にはこうだったから、多分こうなるんじゃないかとか、またいろんなことがわかって、もうちょっとこういう風にしといてもいいかなといろんな予測が立つわけですね。そうやって1人の患者さんに1度作ってもう一度入れ歯を作るなんて事はよくあることなんです。けど、人間だから多分そうやって作っていくのがいいんじゃないかなと私は思うんです。

もし仮に1回だけしか作らなかったとしても、やはりその作ったものを何度も調整したり様子を見たりするわけで、全く新しく作り直すわけではないけれども、問題が起きなかったとしても時々は経過を見てみたいと思うし、ドクターとして。

歯科矯正と歯をできる限り、抜かない方法

2024年2月11日

前回の話に続き、抜歯を避ける方法に関して話をしていきたいと思います。

専門用語でIPRという言葉があります。これはかなり難しい言葉で矯正をある一定以上やっている歯科医師、もしくは歯科衛生士等であれば知っている言葉です。ですが、一般の方にはちょっとわかりにくいので、もう少し噛み砕いてお伝えしていきます。歯と歯の間を0.3ミリほど削るということです。

もし歯と歯の間を0.3ミリほど削ると、0.3ミリの隙間ができるわけです。そうするとその分スペースができて重なってる歯を動かしやすくなります。ということは、歯を抜くよりもその方が合理的であると言う場合があるわけです。

ですが、0.3ミリですので、それだけでは足りない、たった0.3ミリでこんなに重なってるのに歯が治るのか?ということもありますですので、それは1カ所だけではなく、6箇所位とか10箇所位この作業を行うこともあるわけです。そうすると全体としては2から3ミリの隙間ができますので、これらを有効に使って引っかかりをひもといていけばきれいに並ぶと言う方法です。これで抜かないのであれば、とても良い方法の1つであると考えられます。

では、歯と歯の間を0.3ミリ削っても良いのか、大丈夫なのか?ということを気にされる人も出てくると思います。歯の表面には1ミリから2ミリほどのエナメル質と言う層があります。これはとても硬い層で、この層があればはとても虫歯になりにくいのです。ですので、このエナメル質のある範囲内で安全な範囲内を多少だけ削るということなのです。逆に言うと隙間を作るために歯を2ミリ削ったと言うのではちょっとだめな場合も考えられます。

だめな場合とはどういうことかと言うと、歯の神経が生きていれば、削る量は先ほど言った0.3ミリとか0.5ミリのような範囲になるかと思います。ですがもしその歯がもう既にかぶせ物がしてある、神経がないような歯であれば、1ミリ削っても問題は起きないわけです。ということは、全体の状況を考えて、どこをどれぐらい削って、隙間を作るかと言う治療計画になります。そして引っかかりを解くために合理的な場所と量を考えてこの削合を行っていくわけです。

どうでしょうか?あなたは削ると聞いて、ちょっと嫌な気もするかもしれません。ですが、どちらかの選択なのです。IPRと言うこの手法を用いるのか、前回にお話しした小臼歯を抜歯するのか。そうすると患者さんにどうしたいかって言うことを聞くのですが、大抵の場合はあまり抜きたくないから、0.3ミリほど角を丸める、IPRと言う方法を選択される場合があります。ですが、それでも小臼歯を抜歯してくださいと言う方も、実はちらほらいるのです。

どうしてそれでも小臼歯を抜歯してくださいと言う人がいるのでしょうか。それはやはりちょっとでも前に出ているのが確実に下がったほうが良いのではないかと思っているからと思われます。このようなことから人によってどのように物事を捉えているのか、感じているのかが、個人差がかなり激しいということです。ですので、担当のドクターとよく相談してどちらを選択するのかは考えていく必要があります。もちろん診断的に片方しか選べない場合もありますので、そのような場合にはそれを選択する可能性が高いです。

ちなみに、このIP Rと言う方法は最近とても増えてきている方法です。昔からあった方法なのですが。その理由として考えられるのは、マウスピース矯正の普及が1つにはあると思います。マウスピース矯正はこのIP Rと言う方法と相性が良いからです。また昔は、ワイヤー矯正は一般歯科の先生でやっている方が少なく、矯正だけを行う歯科医院で矯正を行っている場合には、一般歯科治療の一部にあたるIR Rを得意としていないためにほとんど行われていなかったと言う実情があります。

マウスピース矯正とワイヤー矯正

2024年1月21日

今現在、大人の矯正、すなわち永久歯を並べる矯正には主にマウスピース矯正とワイヤー矯正が主流となっています。

マウスピース矯正とは何でしょうか?簡単に述べるとインビザラインに代表されるような透明なプラスチックのマウスピースを口の中に入れて歯を動かしていく方法です。この方法の利点は、従来のワイヤー矯正と違い、針金を使わないため、目立ちにくい、遠目から見ると矯正をやっていることがわかりにくいということです。もう一つは透明のマウスピースは取り外し型ですので、固定の針金をつけなくて良いと言う点があります。

一方従来からあるワイヤー矯正と言うのは、お口の歯全体に針金をつけて、歯を動かしていく方法です。この方法は1個1個の歯に四角いブラケットをつけます。これは完全に接着剤でくっついていますので、途中で外すようなことはできないですし、自分で外すことも基本的にはないものです。そしてその周りに針金が付いていて歯を動かしていくものです。

マウスピース矯正は今後さらに流行っていくものであると考えられますが、様々な問題点もあります。それはマウスピースでは全て動かせると言うわけでもないと言うことです。マウスピースで動かせる限界限度というものがあります。もちろん針金だったら、何でも全てどこまででも動かせると言うものでもありませんが。人間の体ですので、当然限度というものがありますから。それを置いても、マウスピースと言うもので、動かすとなると、どこまでも自由度が高いわけではないのです。

そうなるとマウスピースに適しているものは何なのかと言うと、簡単に言ってしまえば軽度から、中程度の問題がある人が、マウスピースに向いていると言うことになります。そしてかつ本人が針金をつけたくないと言う場合です。当院においてもこの2つの矯正方法を成人の方には選択してもらっていますが、現状、半々位で選択をされています。すなわち半分の方はマウスピースが目立たないからいいし、なんとなく痛くなさそうだし。ということです。一方で、私は針金でやりたい、すなわち毎度マウスピースを自分で入れるのを毎日繰り返すのに自信がないと言います。あるいは針金の方がしっかり動きそうだからと言う方もいます。

あなたはどう思われますか?私の個人的な意見としては、歯の位置がどうであるかということもさることながら、本人の気持ちや性格と言う問題があると思います。すなわち、性格的にマウスピースを自分で取り外ししたりするのがとても億劫だと思う人にはやはりマウスピースはやめたほうがいいです。逆に人に見られるのが嫌だ。目立つのがとても気になると言う方であれば、やはりマウスピースにしたほうが良いでしょう

またマウスピースではどうしてもうまく動かないような状況の患者さんも多々います。例えば歯が半分ぐらい埋まってるようなものを引っ張り出して並べるような場合は、もうこれは針金で引っ張るしかないです。マウスピースで引っ張る事はとても難しいですし、うまくいくということは無いので。
そして今矯正の現状としては、マウスピースがものすごい勢いで流行っているために、ワイヤー矯正ができる先生が減っていると言う問題が起きていると私は思います。というのも私自身名古屋にて矯正のセミナーを手伝っていますが、このセミナーでは主にワイヤー矯正、そして時によってはマウスピース矯正もありと言う形で講義実習を進めています。今このセミナーでは、若い先生の受講者がやや減っているのです。この傾向が続くとどういうことが起きるか、ワイヤー矯正のできる先生がどんどん減っていくと言うことです。

ちなみにこのセミナーは1年間のコースで行われていますが、1年間このセミナーを受けただけで、ワイヤー矯正ができると言うわけでもありません。簡単な症例であれば1年受ければできるのですが、中程度以上の症例となると、やはり3年以上はこのコースを受け続けないとなかなかできないと、私は受講者の方を見て思っています。そういう中でマウスピースだけのセミナーと言うのも行われていて、これは1日コースや2日コースといった、極めて短時間でセミナーが行われていることが多いです。

無論それは初心者向けのものなので、とりあえずまず理解すると言うレベルからなのですが、このような短時間の研修を受けてしまえば治療をとりあえずはスタートできると言うものになっているのです。ですからまずはちょっとやってみようと言う先生は、このような二日間コースなどを受けて、マウスピース矯正を始めている方がちらほら見えます。そうなるといよいよワイヤー矯正をやられる先生方が減っていくと言う非常に心配なことが起きているわけです。

私は10年20年先の矯正歯科の世界を考えたとき、マウスピースも大切だが、ワイヤーも技術としてはとても大事であると思っていますので、ワイヤー矯正の技術は大学院や年間コースのセミナーのごく1部でしか教えてもらえないと言う教育飢餓状態をとても危惧しています。